─── 来い。来るんだ。

 何度も繰り返されるその声。真っ暗な闇の中で、その声だけが響いている。

 ─── 戻ってこい。戻ってこい。

 ハッと目を覚ました。
 シーンと静まり返った部屋の中。目を開けた瞬間、視界に映ったのは愛しい人の寝顔。離さない、とでもいうようにガッチリと腰を抱きしめられ、お互いの温もりを分かち合うかのようだ。
 なんだったのだろう、今の声は。ただの夢? いや、あの声はどこか懐かしい気がした。
 知り合い? 失った記憶に関係のある人物だろうか。例え、そうだとしても、どこにいるのかわからない。
 若い男の声だったと思う。目が覚めてしまい、記憶はおぼろげだが。
 甘えるように、飛影の首元に顔を埋めれば、抱きしめていた腕にさらにギュッと力がこもる。
 忘れてしまおう。ただの夢だ。気にすることなどない。
 そう思っていたのだが・・・。

 「どうした?」
 「え?」

 パトロールから戻って来た飛影が、突然に声をかけてきた。

 「あ・・・おかえりなさい、飛影」
 「どうしたと聞いている」
 「えっと・・・?」
 「最近、上の空なことが多い。また暴れたいのか?」

 魔界統一トーナメントが終わって数週間。大統領の煙鬼により、妖怪たちはまとめられ、しかも好き勝手が出来なくなってしまった。人間界で暴れるなど、もってのほかだ。
 飛影はその力もあって、魔界に迷い込んでしまった人間がいないかどうか、小競り合いが起きていないかのパトロールを命じられている。
 もちろん、は百足で留守番だ。
 そのだが、数カ月前の騒動以後、少しだけなら・・・ということで、戦うことを許された。相手は専ら?だが、手加減すること、黒龍波は打たないことを条件に、飛影も相手をすることにしている。
 冷静な時のは、力の加減ができる。飛影は過去にキレたの力しか見たことがないので、躊躇していたのだ。手合わせでボコボコにされる相手は?だけで十分だ。
 だが、は「ううん」と首を横に振った。

 「あのね、最近不思議な夢を見るの」
 「夢・・・?」
 「うん。寝てる時だけだから、夢だと思うのね」
 「ほう?」
 「それがね、ずっと私を呼ぶ声がする夢なの。“戻ってこい”とか“こっちだ”とか」
 「・・・・・・」
 「ね? 不思議でしょ?」

 夢は夢だろう・・・と、飛影は思ったのだが、はどこか不安そうだ。

 「その声に聞き覚えは?」
 「ある・・・と思うんだけど、思い出せない・・・ツッ!」
 「どうした!?


 突然、が眉をしかめ、頭を抱えた。飛影が慌ててに近づく。

 「頭が・・・痛い・・・」
 「何?」
 「痛い・・・」

 まるで万力で頭を締め付けられているような・・・そんなキリキリとした痛み。「痛い・・・!」と涙すら浮かべるに、飛影は何もしてやれず、舌打ちする。
 と、フッとの体から力が抜ける。ドサッと倒れてしまったに飛影は血相変えて、その小さな体を抱き起こした。息はある。どうやら、気を失ってしまったらしい。

 「ちっ・・・!」

 一体、何者だか知らないが、腹が立つ。ここまで彼女を苦しめるとは。
 しかし、再び今のような状態に陥った時、どうすればいいのか。苦しんでいるを見るのは肝がつぶれる。
 こういう時、力になりそうなのは蔵馬だ。飛影はが起きないことを祈りながら、百足を後にした。
 突然、姿を見せた飛影に、蔵馬は驚いたようだ。そういえば、会うのはトーナメント以来である。

 「どうしたんですか? あなた1人ですか?」
 「ああ。少し面倒なことが起きた」
 「に捨てられた、とか・・・」
 「殺すぞ」

 ギロリと睨まれ、蔵馬は「冗談ですよ」と笑った。

 「鎮痛作用のある薬を知らないか?」
 「・・・人間界の薬で、ですか? ありますよ。ただ、妖怪に効くかどうか」
 「オレじゃない。だ」
 「? 怪我でも?」
 「違う。頭が痛いと言い出した。今は寝ている」

 気を失った・・・が正しいのだが。とりあえず、眠っているので、間違いではないだろう。

 「・・・の場合、もっと効くかどうかわかりませんよ? 何せ彼女は人間か妖怪かわからないんですから」
 「ならば、強制的に眠らせる植物をよこせ」
 「そんなに酷いんですか?」

 泣くほどつらいようだ・・・と答えれば、蔵馬は眉間に皺を寄せた。

 「それは、少し普通の頭痛と違いますね。百足に医師はいないんですか?」
 「傷の治療をする奴ならいるが、病気を治す医師はいない」
 「なるほど」

 そもそも、妖怪が病気にかかるなど、聞いたこともない。医師がいないのも、うなずける。

 「けど、医師がいなくて助かったかもしれませんね」
 「何? どういうことだ」
 「知らないんですか? 医師は診察する時に、心臓の音を聞くんです。その時に、上の服を脱がせるんですよ」
 「・・・・・・」
 「そんな顔で睨まないで下さいよ。だから教えてあげたんじゃないですか」

 今にも蔵馬に斬りかからんばかりの形相で睨まれ、苦笑して両手を上げた。
 まったく、この人も変わったものだ・・・と思いつつ、蔵馬は飛影に催眠作用のある植物を渡した。
 それを受け取ると、すぐに百足へ戻る。部屋の中に入り、愕然とした。
 がいない。
 慌てて邪眼を開き、百足の中を捜す。いない。捜索範囲を外へ変えれば、いた。フラフラとした足取りで、どこかへ向かっている。

 「チッ・・・! あの馬鹿が」

 飛影を捜して、百足を出て行ったと思ったのだ。だから、安心させるため、の元へ急いだ。
 はフラフラとした足取りで、それでも何か目的を持って歩いているように見える。それが不思議だった。

 「!」

 の前に降り立つも、彼女は飛影を見ておらず、フラフラと歩いて行く。その瞳はしっかり前を見据えているのに、飛影の姿は目に入っていないようだった。

 「っ!」

 再度名前を呼ぶも、やはりは止まらない。どこへ向かおうとしているのか。飛影には皆目見当もつかない。
 今のは自我を失っている。先ほどの頭痛と関係しているのだろうか? そして、呼ぶ声。もしや、は自分を呼ぶ声に導かれているのでは?
 一体、どこのどいつか知らないが、ハタ迷惑な奴だ。そのツラを拝んでやるのも悪くない。フラフラと歩くの後をついて行く。
 呼び止めて、自分の足で連れて行きたいところだが、今のは聞く耳を持たないのだから、困ったものだ。
 どれくらいの時間、そうしてフラフラと歩いていただろうか。不意にピタッとが足を止めた。数歩後ろを歩いていた飛影も足を止めた。
 と、その体がドサッと崩れ落ち、慌てて飛影がを抱き起こした。

 「おい、どうした? ・・・! !」

 体を揺すると、は目を閉じて・・・次の瞬間パチッと目を開け、キョトンとした顔で、飛影を見た。

 「・・・あれ? 飛影?」

 次いで、キョロキョロと辺りを見回す。

 「ここ・・・どこ?」
 「お前がフラフラとどこかへ歩き出したんだろうが。意識はなかったということか」
 「え? 私が?? う、うん。記憶にない」
 「頭痛は?」
 「えっと・・・大丈夫・・・。なんだったんだろう?」
 「さあな」

 不思議な現象だ。まるで操られでもしていたような。
 操られる・・・やはり、呼んでいたという声に、導かれていたのか。

 「・・・え?」
 「なんだ」

 突然、が声をあげ、顔を上げる。またしてもフラフラと歩き出すだったが、途中で飛影を振り返った。

 「飛影、こっち」
 「何?」
 「こっちに来いって」
 「声が聞こえるのか?」
 「うん」

 自我を保っていても、声が聞こえるのなら、最初からそうしろ・・・と、飛影は姿の見えない相手に頭の中で舌打ちする。
 飛影が近づいてくると、は改めて歩き出す。それを見て、「」と声をかけた。

 「なぁに?」

 の体を抱き上げる飛影。「こっちの方が早い」とつぶやいた。確かに、飛影が抱えて走った方が早い。

 「道案内しろ」
 「うん。ま~っすぐだって」

 言われた通り、まっすぐ走る。やがて見えてくる巨大な穴。はその中へ入れと言う。
 瘴気が濃くなる。弱い妖怪なら、これだけでどうにかなりそうだ。自我を保っていられることに、安堵する。
 はさらに魔界の奥深くへ案内する。あまり奥へ行けば、危険が増す。それでも、声は奥へ奥へと誘うらしい。
 どれだけ奥深くへ行っただろうか。やがて到達する魔界の最下層。そこにあったのは、巨大な城。それ以外、何もない。
 驚いたことに、ここには妖怪が1匹もいないようだ。S級妖怪の1匹や2匹、いてもおかしくないのだが。

 「飛影、城の中」
 「何?」

 声の主は城の中にいるというのか。警戒しながら、城の中へ入り込む。そこは魔界とは思えない、整えられた建物だった。人間界の欧州にある城を思い浮かばされるな、とは思う。だが、ひどく懐かしい気持ちになる。自分は、ここを知っている?

 「飛影、下ろして。自分で歩く」
 「無茶はするなよ」
 「大丈夫」

 飛影に下ろしてもらい、は自分の足で城の中を歩き出す。声は、もうしない。長い廊下を歩き、階段を上る。
 そして・・・出た場所は広い空間。目の前には立派な椅子。さががら玉座のようだ。そして・・・。

 「来たか」
 「!!


 たちの右手の方から声がした。驚いてそちらを見れば、窓辺に1人の男が立っていた。
 長い銀髪を1つに束ね、ゆったりとしたマントに身を包んだ男。人間でいえば、青年といったところか。
 まるで気配を感じなかった。そして・・・男から妖気も霊気も感じない。そう、と同じだ。
 男はフッと笑むと、カツカツと足音を立てながら、たちに近づいてくる。サッと飛影がを庇うように前に出た。

 「お前が忌み子・飛影か」
 「何だ、貴様は」
 「そんな口をきいたこと、後悔するぞ」

 フッと再び笑むと、男は玉座の方へ行き、そこに腰を下ろした。

 「さて・・・我が娘よ」
 「何?

 「え・・・?」

 男が言い放った言葉に、2人が同時に声をあげた。
 “我が娘”・・・確かに、男はそう言った。

 「そうか、まだ記憶は封じられていたか。さすがのお前も、私の力には及ばなかったか。どれ・・・」

 納得したようにつぶやいた後、男がパチンと右手の指を鳴らす。途端、が「あっ・・・」と声をあげ、うずくまった。慌てて飛影がの肩に手を置く。はすぐに「大丈夫」と微笑んだ。
 スッとが立ち上がる。そして、男を真っ直ぐ見つめ、つぶやいた。

 「お父様」

 と。
 それには、さすがの飛影も言葉を失う。どんなに苦労しても、記憶の戻らなかった。それを、指を鳴らしただけで戻すとは。

 「どういうことだ・・・貴様、何者だ」
 「が言っただろう。“お父様”と」
 「そういう意味じゃない。この魔界において、貴様はどんな存在なんだ。ただの妖怪ではないだろう」
 「妖怪・・・? 私たち親子を、そんなものと一緒にされては困る」
 「何・・・?」

 男の言葉に、飛影の眉が吊りあがる。どういう意味かと、今度はに視線を向けた。

 「私とお父様は、妖怪よりも上の存在。魔族よ」
 「魔族・・・!? 純粋な“魔”の力を持つ・・・S級妖怪をも凌ぐ力を持った?」
 「そう。私とお父様は、その魔族の生き残り。お母様はS級妖怪たちに殺されてしまったの」
 「魔族の母親が、か?」
 「うん。お母様は戦う力を持たない魔族だったの。私の治癒の力は、お母様から受け継いだもの」


 なるほど。戦う力がなく、S級妖怪に殺されてしまったということか。

 「お前に妖気も霊気もなかったのは、そのためか・・・」

 “魔力”は“気”ではない。その体を流れる血こそが力の源。いくら使っても失われないが、傷つき血を流すと力が失われる。当然、血が出来れば、再び力は取り戻す。

 「驚いたぜ・・・妖怪どもを束ねる“魔王”にこんな風に会えるとはな」

 飛影の頬を、一筋の汗が伝う。
 仙水の比ではない。何もしていない、ただそこに存在するだけで、まるで首を絞められているかのような、息苦しさを感じる。

 「お父様、どうして私の記憶を戻したの? あの時は、“時が来れば”って言ってたのに。それに、攻め込んできた妖怪たちは? お父様が1人で?」
 「そういくつも質問するな。私は1人しかいないのだぞ」

 フッと苦笑する魔王に、は「ごめんなさい」と謝罪する。

 「まず1つ目・・・お前の記憶を戻したのは、この魔界が1人の妖怪により、統一されたためだ。煙鬼といったか? あいつはなかなか話がわかる奴だ」
 「会ったの?」
 「ああ。ついでに力も見せてもらった。なかなか面白かった」

 面白かった・・・あの煙鬼を相手に楽しんだということか。さぞかし、煙鬼は実力の差を見せつけられたことだろう。

 「2つ目・・・あの時攻めてきた奴らは、私が消した。そういえば、お前を追いかけて、何人かの妖怪の下っ端が上層へ行ったようだが? あいつらは、お前が?」
 「いいえ。彼が助けてくれたの」

 が傍らの飛影に目を向ける。魔王は「ほう・・・」と目を見張った。当時の飛影は、かなりランクの低い妖怪だったはず。それがやられたとなると、追手は格下も格下だったということか。
 今の飛影は、すでにS級妖怪と肩を並べるほどだ。それでも、この目の前の男には顔色なしといったところである。

 「S級妖怪といえど、お前はかつての魔界の王に敵わなかったらしいな」
 「何・・・?」

 魔王が飛影を長髪するかのように言い放ち、フッと笑んだ。が咎めるように父を呼ぶ。

 「そんなヤワな男に、娘は渡せんな」
 「S級妖怪よりも上? 貴様みたいな優男が?」
 「人を見た目で判断しないことだな。今のお前を倒すことなど、赤子の手をひねるようなものだ」
 「ほざけっ!!


 が止めるよりも早く、一瞬で飛影は刀を抜き、魔王に斬りかかる。しかし、その攻撃は受け止められた。魔王の人差し指1本で。

 「な・・・!?」


 愕然とする飛影の腹に、強烈な一撃。飛影の体が、広い部屋の壁まで吹っ飛んだ。

 「やめて、お父様! 飛影にひどいことしたら、タダじゃすまないわよ!」
 「あの小僧のどこがそんなにいい?」
 「全部よっ!!」


 即答してみせた愛娘に、魔王は肩をすくめ、やれやれと首を振った。

 「たった3年でずい分と執着したものだな」
 「飛影は何度も私を助けてくれたの! 私のために、悪事だってやめた。私は、そんな彼が大好きよ!」

 キッと父を睨みつけてから、は飛影に走り寄った。ゲホゲホと咳き込む飛影の背を撫でてやる。

 「大丈夫? 飛影・・・!」
 「気にするな・・・」
 「でも・・・!」

 心配しているに構わず、飛影はヨロヨロと立ち上がる。

 「おい、貴様・・・」
 「フム。なかなかしぶといな。丸1日くらいは起きないようにしてやったというのに」
 「フン。相手を舐めた証拠だ」
 「だが、今の状態では何も出来まい。出直してこい。まあ、何度やっても同じだがな」

 と、飛影が右手の包帯を解く。が「あ・・・」と言う間もなく、飛影は黒龍を呼び出し、その身に宿すと、魔王に襲いかかった。
 殴りつけた拳は片手で受け止められ、空いた片手で殴り返す。吹っ飛ぶ体を、なんとか地を蹴って耐え、殴打のラッシュをお見舞いする。だが、魔王はビクともしない。

 「なるほど・・・爆発的に妖力を上げる技なのか、黒龍波とは。面白いな。だが・・・」

 魔王がガシッと飛影の頭を掴む。殴打の手が止まった。

 「これしきの妖力なぞ、痛くもかゆくもない」

 そのまま、飛影の頭を床に叩きつける。がたまらず飛影に駆け寄った。

 「飛影! 飛影・・・!!」


 名を呼ぶと、ピクリと体が反応する。起き上がった飛影の頭からは、血が流れていた。

 「お父様、ひどいっ!!」

 「何を言っている。相手は真っ向から勝負を挑んできているのだ。きちんと相手をしなければ、失礼だろう?」
 「なによ、その屁理屈は!」

 フラフラと立ち上がる飛影を、がガシッと手を掴んで止める。その途端、睨まれた。

 「離せ・・・!!」

 「ダメっ! 今の飛影じゃ、お父様にかすり傷1つ付けられないもの!」
 「このまま引き下がれるか・・・」
 「本当は眠いんでしょ?」

 黒龍波を打ったのだ。冬眠に入る前兆が来ていてもおかしくはない。だが、飛影は乱暴にの体を押しやる。

 「やれやれ・・・」
 「お父様っ! 飛影っ!」

 片手を上げ、戦闘体勢に入った魔王に、が声をあげる。
 飛影が三度、魔王に殴りかかる。当然、それは手で封じられる。蹴りを入れるも、ヒョイと飛んで交わされる。
 攻撃しては交わされ、防がれ・・・そんな攻防が数分。魔王が不意に飛影の腕を掴み、の方へ放る。がガシッと受け止めた体が、フラリ・・・倒れかかった。

 「飛影っ!」

 限界だったらしい。飛影はスヤスヤと眠りこけていて・・・その邪気のない寝顔にホーッと息を吐いた。

 「面白い男だな。気に入ったぞ」

 息一つ切らさず、玉座についた魔王が笑う。は頬をふくらませ、飛影を自身の膝枕で寝かせてやる。

 「そんな顔をするな。心意気が気に入ったと言っているんだ」
 「・・・もしかして、暇つぶしの相手にするつもり?」
 「なるほど。それもいいな。私に立ち向かってくる奴など、そうそういないからな」
 「もう・・・! 飛影はオモチャじゃないのよ!」
 「面白い奴には変わりない」

 フッと笑う魔王に、は怒っているようだ。恋人を翻弄されたのだ。無理もない。

 「・・・いつもの場所へ戻るのか?」

 “いつもの場所”・・・百足のことだろう。は首をかしげる。彼女は飛影と共にあるのだ。彼がどうするのかは、彼にしかわからない。

 「せっかく帰って来たんだ。ゆっくりしていけ」

 そう言うと、玉座から立ち上がり、部屋を出て行った。そんな父の背を見送り、はハァ・・・とため息をついた。

 「どうするの? 飛影」

 スースーと穏やかな寝息を立てる飛影からの返事はない。