4.まるでそれは姫君の結婚
恋人の誕生日を祝いたい。それはごく普通のことだと思う。
ルブランでお祝いしよう、そうメッセージを送れば「ありがとう」と返ってきた。
誕生日当日、ルブランで待っていると、恋人からメッセージが飛んできた。四軒茶屋に着いたという。
迎えに行くから待ってて、と返信をし、はルブランを出た。
「・・・!」
駅の改札を出たところで、恋人のが待っていた。今日は桜色のワンピースに身を包んでいる。の姿を見つけると、手を振ってきた。2人、お互いに歩み寄ると、自然な動作で手を繋いだ。
もう何度も2人で歩いた道。ルブランに到着し、ドアを開ける。ドアベルが鳴り、惣治郎がこちらを見る。その表情が柔らかくなった。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
出迎えの言葉をくれた惣治郎に頭を下げた。は何も言わずに階段のほうへ歩いていく。
「ちゃん、今日誕生日なんだって?」
「はい。から聞いたんですか?」
「ああ。あいつ、数日前からソワソワしてたからな。ま、盛大に祝ってもらいな」
「ありがとうございます」
「後で下においで。とっておきのブレンド、ごちそうするよ」
「はい!」
再び頭を下げ、はを追いかけた。そういえば、と思い、階段の途中でを待っていたに問いかける。
「ねえ、杏たちは?」
「いないけど」
「え・・・? だって、私のお誕生日のお祝いだって・・・」
「は、オレと2人きりは嫌なわけ?」
「そうじゃないけど! みんなでワイワイするんだと思ってたから」
「それは、また今度」
言いながら、階段を上り、いつもの屋根裏へ。いつもの・・・なのだが。
普段、簡素なその部屋。今日は部屋の中央にテーブルが置かれ、その上にきれいな花束が飾ってあった。
「うわぁ・・・」と声をあげるの背後に立ったが、そのまま恋人の体を横抱きに抱え、ソファに運ばれた。
「どうしたの? ・・・」
「・・・どうしたのって、の誕生日だから」
だから、心からのお祝いをしたかったのだ。
だが、はからのお姫様扱いに戸惑った。まさか、こんな風に祝ってもらえると思わなかった。2人きりで、なんて。
テーブルに置かれていたグラスを2つ手に取ったは、そのうちの1つをに差し出してきた。はそれを受け取る。
「シャンパンで乾杯・・・とはいかないから」
「当然でしょ」
用意されていたのは、シャンパンに色合いの似ているジンジャーエール。が2人のグラスに透明な薄金色の液体を注いだ。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
カチン、とグラスをぶつけ合い、微笑みあって、ジンジャーエールを飲む。何度も飲んでいるそれは、特別おいしかった。
「あれ? そういえばモルガナは?」
「双葉のとこ。気を遣ったみたいだ」
「そうなの? なんだ・・・ホントにと2人きりなのね・・・」
フゥ、と息を吐いたに、は少々ムッとし、グラスをテーブルに置くと、彼女のグラスを奪い、テーブルに置いた。
「? キャ・・・!」
突然のことに、恋人を仰ぎ見たの体を、はソファに押し倒した。が目を丸くしている。
「?? ど、どうしたの?」
「そんなにオレと2人きりが嫌なんだ?」
「え・・・あ・・・いや、そういうんじゃなくて・・・」
「さっきから、杏とかモルガナがいないこと、残念にしてるから。今日くらいは2人きりになりたい」
そう言いつつ、の手がの素足に触れる。くすぐったくて、身を捩った。それに気をよくしたが、スルスルと手を上のほうへ滑らせていく。
「ちょ・・・! こんな真昼間から何して・・・!!」
慌てては両手でもって、の右手を押さえる。その間も、手はの足を撫でていて。
「大丈夫、惣治郎さん、いるし。最後までしないから」
「そういう問題じゃないでしょ・・・!!」
押し倒し、足で撫でまわすのは、健全な高校生カップルのすることではない。
・・・とは言え、2人はすでに体を重ねているが。
抵抗を続けるの唇に、噛みつくようなキスを贈る。唇で唇を食み、チュッと音を立てて離れ、そう思いきや、すぐに再び口づけが降ってくる。
の足の間には膝をつき、が足を閉じられないようにする。
何度も啄むようなキスをされる。息苦しさから、が呼吸のために口を開ければ、が無遠慮に舌を入れてきた。
慌てて舌を逃がすが、すぐに捕まり、絡められる。水音が屋根裏部屋に響き、の鼓膜を響かせた。
「ふ・・・あ・・・」
唇が解放され、が息を吐く。2人の間を、どちらのものかわからない銀糸が繋いだ。
「・・・ズルイ」
「え?」
顔を覆い、がつぶやいた。が首をかしげる。
「、余裕かましてて、ズルイ・・・」
「余裕なんてないよ。すっごく自分を押さえてる」
「ホント?」
「本当。今すぐ抱きたくて、必死に理性と戦ってる」
「バカ」
のしかかるの体をグイッと押しやる。素直には体をどかした。
「そういえば、惣治郎さんがとっておきのブレンド淹れてくれるって言ってた」
「もう下に行くの?」
「だって・・・がエッチなことするから・・・」
「まだしてない」
「したでしょ!!」
耳まで真っ赤にし、が怒鳴る。もっと深いことまでしているのに、あの程度で“エッチなこと”と言われてしまうとは。
「今夜は泊まっていってくれる?」
立ち上がろうとしたのスカートの裾を掴み、が尋ねる。いつもは伊達眼鏡をしているが、今日は休みだし、の要望もあり、かけていない。澄んだ濃灰色の瞳がすがるようにを見上げてきた。
「う・・・うん・・・」
「そっか。良かった」
の答えに、は満足そうに笑い、立ち上がるとの手を取り、階段のほうへ。店舗へ下りると、「コーヒー飲みに来ました」とは惣治郎に告げた。
店内に客は2組。どちらも見たことがある。
「お前の分はねぇぞ。あくまでちゃんの誕生日プレゼントだ」
「そんなツレないこと言わないでくださいよ」
「てめぇの分は、てめぇで淹れろ」
冷たい惣治郎の言葉には肩をすくめ、はクスクス笑った。まるで父子のようだ。双葉が外に出るようになってから、ますますそう見えてきた。
確かに、は保護観察中の身だ。しかし、それは冤罪で。彼は正義感の強い1人の少年である。こうしていると、本当にそれが当たり前で。
ああ、幸せだな・・・と、は心から思った。
***
「モルガナ、今夜は双葉の所に泊まるって」
「え・・・あ、そう」
惣治郎が帰宅し、ルブランを閉めたは、双葉から飛んできたチャットを見て、にそう告げた。
ここで落胆しては、先ほどの二の舞になる。グッとこらえ、なんでもない風を装った。
「あ、でも私、お泊りの道具とか持ってきてないし・・・」
「用意してある。さすがに下着は無理だったけど」
「そ、そうですか・・・」
なんて用意周到は男・・・。風呂は向かいの銭湯へ向かう。「また後で」と告げ、男湯と女湯に分かれる。
家の浴槽とは比べ物にならないほど広い湯船に浸かり、フゥ〜と息を吐く。たまにはこういうのもいいものだ。
十分に体を温め、外へ出ればすでにが出ており、待っていた。ちゃんと髪を乾かしていないため、いつもはクセのある黒髪が、今はペタリとボリュームダウンしている。
「もう! ちゃんと乾かさないと!」
持っていたタオルで拭いてやると、が満足そうに笑う。これを狙っていたのか。
目の前の距離だというのに、手を繋いでルブランへ戻る。そのまま屋根裏へ。買ってきたミネラルウォーターを飲み、乾いていた体に水分を与える。
がベッドに腰を下ろし、ポンポンと自分の横を叩く。そこへ座れという意味だ。ここは素直に従っておこう。
隣に座ると、優しく肩を抱かれた。から香るシャンプーの香りに、は目を閉じた。飾られた花の香りに似ていた。
「、寝るなよ?」
今夜は寝かせないから・・・耳元で囁かれたその言葉に、はギョッとし、から距離を取ろうとしたが、遅かった。グッと手を掴まれる。
「・・・!? あ、あの・・・今日は私のお祝いでしょ?」
「そうだよ」
「だ、だったら、その・・・少しは休ませてくれても・・・」
「もちろん、休ませるよ。ただ、寝かせない」
「ムチャ言うな!」
いくら2人とも高校生で、体力に自信があるとはいえ、一睡もせずに交じり合うなど、無理な話だ。
「大丈夫」とが囁く。何がよ・・・と尋ねれば、「滋養強壮ドリンク飲んだから」と、わけのわからない返しをされた。いや、私は飲んでないんですけど? は心の中でツッコミを入れる。
グイッと引き寄せられ、にすっぽりと抱きしめられる。彼の顎がの肩に乗り・・・チュッと首筋にキスをされた。ビクッと肩が震える。
「・・・」
「好きだよ。愛してる、」
耳元で囁かれる愛の言葉。胸の奥がジンワリと熱を持つ。愛する人からの熱い想い。の手がの腕をさする。
に渡されたのは、メンズ用のTシャツと、スウェット。のものかもしれない。大きなそれは、少しずらせばすぐに肩が顕わになり、がそこに口づける。強く吸われる。
「んっ・・・」
思わず声が漏れた。の唇が触れたところが熱い。肩を離れ、再び首筋に触れ、耳たぶに触れてきた。くすぐったくて、肩をすくめる。
唇に気を取られている間に、の手はの体を撫でまわし、Tシャツの裾に入り込んできた。そのまま、下着のつけていない胸に触れた。
「あっ・・・! ちょ・・・! ・・・!」
いきなりの刺激。痛いくらいに強く揉まれる。だが、唇の動きも気になる。
柔らかいそこに指が食い込み、先端を軽くつねられる。敏感になっていたそこが、刺激により膨張する。
「感じてる?」
「っ・・・!!」
フッと耳に息を吹きかけるように、が囁く。必死に快感を逃そうと、唇を噛んだ。
「唇切れちゃうよ」
の指が、優しくの唇に触れる。目線を合わせ、キスをされる。先ほどのように、甘くて濃いキス。再び舌を逃し、の舌がそれを捕らえる。
キスの合間にが吐息をこぼし・・・の手がの頬に触れる。の口からも熱い吐息が漏れ出た。
チュッとリップ音を立てながら、再びはの胸に手を伸ばした。下からすくい上げるように揉まれる。先端をこねられ、の口から甘い声が漏れた。
「ヤラシー声」
クスッとが意地悪く笑った。はハァハァと息を荒くする。
「脱がせるよ」
告げて、Tシャツを頭から脱がされる。空気に触れ、胸の先端が痛いくらいに張りつめた。の体を、がベッドに横たえ、そのまま胸の先端を口に含んだ。舌で転がされ、甘噛みされ、ブルッと体が震える。
「声、聴きたい」
「イヤ・・・」
「どうして? オレをその気にさせてよ」
スルスルとの手がの下腹部を撫でる。そのままスウェットの中に手が入り込み、下着の上から割れ目をなぞった。途端、は「んっ!」とくぐもった声をあげた。
「もしかして、もう濡れてる?」
「バ・・・カ・・・! そんなこと・・・!!」
「そう? 直接触ればわかるけど」
「・・・! あっ!!」
下着の隙間から指が入り込み、直接そこをなぞった。そして、ツプリと指が侵入してくる。の眉間に皺が寄った。クチクチと音がする。
「やっぱりもう濡れてる。ヤラシー体」
「う・・・」
「ごめん、泣かないで。、愛してる」
チュッと頬とまぶたにキスをされ、はのスウェットのズボンと下着を脱がせた。「あっ!」と声をあげた、一瞬の出来事。
膝を立たせ、そのままグイッと左右に開かれ、の恥部がの目に晒される。「イヤッ!」とあげた声は、黙殺された。の筋張った長い指が、の秘部に差し込まれ、グチュグチュと音を立てる。恥ずかしくて、耳を塞いだ。イヤイヤ、と首を横に振れば、シーツが乱れる。
「やっ・・・あ・・・! ・・・! ダメっ!!」
「気持ちイイ? もっと気持ちイイことしたい?」
「う・・・あ・・・っ! そんなに・・・! ダメだって・・・! あぁっ!!」
「ここも好きだよね」
がニヤリと笑い、入口上の突起を指で押し潰せば、が甲高い声をあげ、腰をガクガクと震わせ、達した。
「イッちゃった? 今度は2人でイクよ?」
「も、ダメ・・・」
「何言ってるの。これからが本番」
もTシャツとズボン、下着を脱ぐ。の痴態を目にし、のソレは上を向き、先端から先走りの液を垂らしている。
「挿入るよ」
「ダメ! 今、イッたばっか・・・はぅ!!」
の抵抗もむなしく、の性器がの膣内に侵入してくる。
熱くて硬いそれは、の中に入り、ズルッと抜け、再び入り込んでくる。
「あっ・・・やっ! ・・・! ダメっ! あ・・・たま、おかしく・・・なるっ!!」
「いいよ・・・なろう? 2人で・・・おかしく・・・!」
「う・・・うぅ・・・ん・・・! あぁ・・・!」
「クッ・・・キッツ・・・。、締めすぎ・・・!」
の男根は出たり入ったりを繰り返し、の膣内は収縮を繰り返す。
「・・・っ!!」
「呼んで、・・・もっと・・・オレの名前・・・」
「っ! ・・・っ!! あぁっ!! っ!!」
の手がの背に伸び、すがりつく。ガリッ・・・引っかかれた感触がした。だが、それすらも快感に繋がる。
「・・・愛してる・・・」
「・・・私・・・も・・・!!」
ギュッと目を閉じ、ハァハァと荒い息を吐く。は腰の動きを早くし、抉るような動きに変える。途端に、がすすり泣くように声をあげ、激しく首を横に振った。
「ダメっ・・・! そこっ! 気持ちい・・・!!」
「ここっ? ここがイイの?」
「ああっ・・・! 奥・・・! 奥がいいのぉ!!」
「くっ・・・!」
の嬌声に煽られ、は激しく男根で奥を突く。が「ひっ・・・!」と声をあげ、涙をにじませた。
限界が近い。の膣内は容赦なく、の男根を締め上げる。
「駄目だ・・・っ! っ! オレ・・・!」
「ああっ! ・・・! イクッ! 私・・・イッちゃ・・・!」
「いいよ・・・一緒に・・・! くっ・・・!!」
がいっそうの男根を締め上げ、たまらずはの中で精を吐き出した。
ハァ・・・ハァ・・・と、2人は荒い呼吸を繰り返す。吐精したの男根が、の中からズルリと抜け出る。
「・・・ホントに、今日は寝かせてくれないの?」
が息を整えたのち、上目遣いに尋ねた。そんな顔をされたら、また繋がりたくなる。
「どうしてほしい?」
「・・・私は、こうしてとくっついてるだけで、幸せなんだけどなぁ」
「裸で?」
「・・・服着て」
「じゃあ・・・もう1回だけ」
チュッとキスをし、が優しく微笑む。
「」
「うん?」
「改めて、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
はにかむが可愛くて、たまらず腕の中に閉じ込めた。