ずっと、独りだった。これから先も、そうだろうと思っていた。仲間なんていらない。足手まといになるだけだから。

 「世界最強の剣・・・?」
 「ああ」

 道中、モンスターと戦っていた、凄腕の少女と出会った。年は自分とそう変わらない。たった1人で、数匹のモンスターと戦っていた。テリーは、そんな彼女に興味を持ち、「一緒に最強の剣を探さないか?」と持ちかけたのだ。

 「そんな剣があるの・・・?」
 「あるさ。オレはそう信じている」
 「そう・・・。そうね、見てみたいな」

 こうして、2人の旅は始まった。
 会ったばかりだというのに、2人の戦闘での息はピッタリだった。 が速さで翻弄し、テリーがそこでとどめを刺す。テリーも身軽だが、 は女性ということもあって、それ以上に俊敏だった。

 「私、テリーの力になれてる? 役立たずじゃない?」
 「ああ。わかってるだろ。オレたちの息はピッタリだ。 がよければずっと・・・いや、できれば長くオレについてきてくれると助かる。 のことは、頼りにしているからな」

 テリーのその言葉に、 がうれしそうに笑う。その笑顔が眩しくて、テリーはそっと目を逸らしていた。
 その日の夜は、町にたどり着き、野宿にはならずにすんだ。教会へ向かい、2人でお祈りを捧げる。そうしてから、テリーがおもむろに へ視線を向けた。

 「お前の剣、少し刃こぼれしてきたな。買い替えるか」
 「うん・・・ありがとう」
 「別に礼はいらない。一緒に旅をしているんだからな」

 少しだけ、ぶっきらぼうにテリーが告げる。別に怒っているのではなく、照れ隠しだ。

 「ねえ、テリー・・・私、本当に足手まといじゃない?」

 2人で旅を始めてから、何度となく が尋ねた言葉。テリーは呆れたようにため息をついた。

 「お前の強さは、オレが認めている。それに、2人旅の方が、 も助かるだろ」
 「うん・・・そう、だね・・・」

 テリーが一緒にいると、変な男に絡まれずにすむ。それに、なんといっても彼は強い。旅を続ける中で、どれほど心強いか。
 と、そこで教会の神父がやってきて・・・2人に微笑んだ。

 「おや、旅の方。こんな夜更けに、いかがいたしましたか?」
 「いや、少しお祈りをしていただけだ。気にしないでくれ」
 「そうですか。しかし、お気をつけて。この辺りには、夜になると野盗がうろつき始めますから」

 神父のその言葉に、 は怯えたような表情を浮かべる。彼女は人間相手に戦ったことがないのだ。
 それに気づいたテリーが、そっと の手を握り、その指先に口づける。

 「大丈夫だ。その時はオレが守る」
 「う、うん・・・」

 心強いテリーの言葉に、 は小さくうなずいた。
 宿へ向かおうと、道を歩いていた時だった。塞ぐように大男が1人、姿を見せたのは。

 「よぉ、兄ちゃん。カワイイ女の子連れてんじゃねぇか」

 大男がニヤリと笑う。もしかしなくても、先ほど神父が言っていた野盗だろう。

 「あんまりオレから離れるなよ」
 「うん・・・」

 大男が、その体に見合った大剣を振り回す。こんな所で暴れるとは、迷惑この上ない。

 「旅の途中で寄っただけだろ? 金と女を置いて、とっととこの町から出ていきゃ、大人しく退散するよ」
 「悪いが、こいつはオレの女だ。渡すつもりは、さらさらないね」

 「下がってろ」テリーが に告げる。 は小さくうなずき、言われた通りに数歩下がった。ただし、先ほど彼が言った通り、なるべく離れすぎず、近すぎずの距離で。
 剣と剣がぶつかる音が響く。テリーが負けるとは思わない。だが、 は違った。完全に油断していた。野盗たちに取り囲まれ、後ろから羽交い締めにされた。

 「 っ!」

 テリーがよそ見をした瞬間、大男が「どこを見てやがる!」と大剣を振り下ろす。テリーは身を翻し、そのままの勢いで、男を斬った。大男が背中から倒れ、かしらを失った部下たちが逃げていく。

 「 ・・・!」
 「ご、ごめんなさい・・・!」

 その場に座り込んでしまった に手を貸し、立ち上がらせると、テリーはその小さな体を抱きしめた。

 「謝るな。お前が無事でよかった」

 テリーの優しい言葉に、 もテリーの背に腕を伸ばし、抱きついた。
 警らの人間に大男を任せ、2人は手を繋ぎながら、宿屋へ向かった。部屋は2人で1つだ。ずっとそうしてきた。

 「テリー、さっきはありがとう」
 「いや。怪我はないか?」
 「大丈夫」

 微笑む に、テリーはホッとした表情を浮かべる。

 「お前の身に何かあったら、オレは・・・」
 「テリー・・・」

 そっと、 の頬に触れる。 はそっと目を閉じ、テリーは彼女の唇に口づけを落とし・・・そのまま、2人の体はベッドに沈んだ。
 2人の甘い時間を過ごし、宿屋の屋上へ出る。白い満月がキレイだ。

 「 ・・・オレが今度から必ずお前を守る。だから・・・これからも、傍にいてほしい」

 澄んだ紫の瞳が、 を捉えて離さない。 は1つうなずいた。

 「うん・・・私は、テリーから離れない。もう離れられない」

 答えた の体を抱きしめ、2人は月の下で約束のキスを交わした。