運命の名のもとに
Chapter:4
ドリーム小説
船の中に入り、まず確認したのは、空気があるかどうか。調べたところ、無事、酸素はあるようだ。ドアを閉め、2人は奥に進むと、宇宙服を脱いだ。
「フゥ・・・窮屈だったね」
「うん」
アーヴァインの苦笑に、も苦笑で応えた。なんだか、妙に照れ臭かった。
「あの・・・ね、アヴィ」
「なんだい?」
「・・・ありがとう。助けに来てくれて。すごく・・・うれしかったよ」
「当たり前じゃないか。君は、僕の大切な人なんだから」
あっさりとそんなことを言われ、は頬を真っ赤に染めた。
「本当は、抱きついてきてほしいけど・・・まだ、安心は出来ないからね」
「・・・あ」
「だって、もっと生きたいでしょ? みんなのとこに、帰りたいだろ?」
「うん・・・」
だから、帰る方法を探そうと、歩き出した時だった。下の方から何かが鳴く声がしたのだ。
慌てて身を隠す2人。その眼下を、見たこともないモンスターが歩いて行く。
「何かな、アレ。とても友好的には見えないけど・・・」
「う〜ん・・・倒さないとダメっぽい・・・かな?」
アーヴァインは愛銃を構えるも、に武器はない。愛刀はガーデンに残してきたままだった。幸いなことに、魔法はいくつかストックがある。アーヴァインの援護くらいはできそうだ。
船の中を見て回りたいのだが、いたるところにモンスターがいる。赤いの黄色いの緑の紫の・・・。しかも、倒したと思ったのに、一度離れて再び行くと、復活しているのだ。
「おかしい・・・! 絶対におかしいわよ、アレ!」
「う〜ん・・・」
の言葉に、アーヴァインは腕を組んで考え込む。
倒したモンスターは、一度は確かに息絶える。そして、復活したモンスターは、新たに生まれたのではなく、倒されたものが、再び息を吹き返しているようだ。
「何か、意味があるんだと思う・・・。この中に、何体のモンスターがいるんだろうか?」
「襲いかかってきたのが3体・・・他に・・・」
指を折り、がモンスターの数を数える。
「・・・8体ってとこかしら?」
「それぞれに色がついてるよね。体と・・・頭の部分かな?」
「あ・・・! まさか、同じ色の奴らから倒さないとダメとか??」
その可能性は高い。ものは試し、とまずは紫のモンスターを探し、2体倒すと、今度は赤いのを2体。紫のモンスターのいた所に戻ると、息絶えたままだった。
「わ〜! ビンゴ!! よし、この調子で残りの4体も倒しましょう!」
「うん」
要領がわかれば、あとは倒すだけだ。全てのモンスターを倒すと、不思議なことに、全てのモンスターの死骸が消えた。
「とりあえず・・・コクピットへ行ってみようか」
「うん」
エレベーターでコクピットに上がると、たくさんの椅子が並んでいた。そして、ガラス窓の向こうには宇宙が見えている。
「これ・・・操縦できたらいいんだけどね・・・」
言いながら、アーヴァインが並んだ椅子に近づくと、どこからか何やら聞こえてきた。
「何か言ってるみたいだけど・・・ボリュームは・・・と」
色々といじってみる。壊れるということはないだろう。案の定、声が大きくなった。
《こちらエアステーション。こちらエスタ・エアステーション》
「え・・・?」
《飛空艇ラグナロク応答せよ。飛空艇ラグナロク応答せよ》
聞こえてきた声に、アーヴァインとは顔を見合わせた。
《こちらエアステーション。飛空艇ラグナロク応答せよ》
「この船はラグナロクっていうんですか?」
《Wow! ホントにラグナロクなのか? 宇宙にいるんだろ?》
「はい・・・宇宙のどこかに・・・」
《ラジャー、ラジャー! 貴船の位置はこちらで把握している》
さすがエスタ。技術の最先端を行っている。
『よかった・・・地上に戻れる・・・』
アーヴァインはホッとする。きっと大丈夫だ。エスタの人が、自分たちを助けてくれる。
《ラグナロク・・・17年ぶりだ》
「あの・・・僕たち、地上に帰れますよね?」
《こっちに任せとけ! 燃料は十分残ってるはずだ。だから大気圏突入プログラムに、現在データを入力すれば大丈夫だ。大気圏に入ったら、こっちから誘導する。な、安心しただろ?》
「データの入力の仕方が、わからないのですが・・・」
《大丈夫! なんでも教えてやるさ。今、操縦席についてるか?》
とは言われても、どれが操縦席なのかも、わからない。
「シートがたくさんあります」
《右舷側のシートだ。席に着いたら教えてくれ》
言われた場所に座り、アーヴァインが指示を仰ぐ。
《目の前にタッチパネルが見えるだろ?》
「はい」
《あとは簡単だ。これから言うデータを入力してくれ》
指示に従って、アーヴァインがデータ入力していく様子を、は離れた場所から見守っていた。どこか不安そうにも見えるが、無事に帰れるか心配しているのだろう。
《エラーは出ていないな?》
「はい、大丈夫みたいです」
《それから・・・大丈夫だと思うんだが、やってほしいことがある。すべて燃料の消費を抑えるための措置だ。重力発生装置を切れ。さっきと同じパネルで操作できる》
「はい」
《おめでとうラグナロク。これでOKだ。それから・・・効果があるのかは知らないが、言っておきたい言葉がある。エスタ・エアステーションスタッフ一同、貴船の幸運を祈る》
「ありがとう」
通信が切れた。あとは勝手にラグナロクが動いてくれる。地上へ戻るだけだ。
「、そこで何してるの? こっちにおいで。座りなよ」
「うん・・・」
フワリ・・・と浮く体をなんとか動かし、が操縦席へ移動する。アーヴァインがその手を取ると、そのまま彼女の小さな体が腕の中に飛び込んできた。
「・・・帰れるかな?」
ポツリ・・・が小さくつぶやいた。
「たぶん・・・ね。ほら、。危ないから、そっちの席に座って・・・」
肩を掴み、離そうとしたが、はアーヴァインから離れようとしない。
「ごめん・・・もう少し、こうしていたい」
「え・・・あ、うん・・・」
の言葉に、アーヴァインの心臓が大きく跳ねる。何度も言うが、アーヴァインにとって、は大切な女の子である。後先考えずに、宇宙へ飛び出して行ってしまうほどに・・・。
「・・・私は、両親の温もりを知らない。おじい様にも抱きしめられた記憶もない。アヴィは?」
「僕かい? 僕だって同じだよ。ガルバディアの一般家庭に引き取られる予定だったんだけど、その人たちは迎えに来なくてね。仕方なく、ガルバディア・ガーデンに行くことにしたんだ。ありゃ、僕が13歳くらいの時かな?」
「石の家を出てから、そんなことがあったんだね。私は、その頃はもうおじい様のもとにいて・・・ガルバディア・ガーデンに通い始めてたね。アヴィとも、そこで再会してた」
「そうだよ。ガルバディアの軍人さんの孫だって知って、すごくビックリしたんだから!」
「でも・・・私はすぐにSeeD試験のために、バラムへ行ってしまった・・・」
「うん。それで僕はまた独りになっちゃったんだ」
そんな寂しさを紛らわすために、わざと陽気に振る舞って・・・見た目の良さも利用して、女の子に優しくした。だけど、いつだってアーヴァインの心の中にいたのはだった。
優しい言葉をかけるだけ。笑顔を向けるだけ。けして、女の子と深い関係になろうとは思わなかった。
「・・・本当は、おじい様から逃げたかっただけなの」
「うん?」
「SeeDを目指した理由。ガルバディアを出れば、自由になれると思った。“エンデコット”の名前に縛られず、自由に生きられると思った」
「でもG.F.のせいで、その理由を忘れてしまったんだね。ガーデンに在籍している以上、目指すのはSeeDだもんね」
「アヴィは、目指さないの?」
「僕?」
「・・・SeeD」
の問いかけに、アーヴァインは「う〜ん・・・」と唸る。
「そうだなぁ・・・今までは興味なかった。危険な稼業だろ? SeeDって」
「そうね」
「でも、今は・・・やスコールたちを見て、少しだけ・・・目指してみようかなって思う」
「サイファーみたいに、万年候補生にならないでね?」
クスッとが笑う。アーヴァインがSeeDを目指すのであれば、彼もまたセルフィのように、バラム・ガーデンへ転校することになるだろう。
「でも・・・アヴィ、すごいもんね。今だって、SeeDに負けないくらい、強かったし・・・判断能力もあったし・・・」
先輩SeeDのにそう言われるのは照れくさい。この1つ年上の少女は、1年前にすでにSeeDの資格を得ているのだ。
「少しは、に認めてもらえたかな?」
「もちろん。アヴィのこと・・・すごく・・・たのもしく感じたよ」
そっと、がアーヴァインから体を離し、彼を見上げた。「お兄さんみたい」と笑う。
「僕のが年下だろ? 僕は君の兄じゃないよ」
「わかってる。アーヴァインは今、私に一番安心をくれる人。傍にいたい、って・・・思わせてくれる人」
「・・・」
それはつまり、期待してもいいということか?
と、そんな2人の雰囲気を、から壊してしまう。アーヴァインの反対側のシートに座ったので、アーヴァインも自分のシートに座った。
「帰ったら・・・一緒にいられなくなるね」
「? どうして? そりゃ、どうなるのかなんて、誰にもわからないけど、大丈夫だよ。無事に帰れるし、僕はSeeDを目指して、バラムに・・・」
「そういう意味じゃないの」
「え・・・?」
「みんな、許して・・・くれないもの・・・」
「許す?」
が何を恐れているのか、アーヴァインにはわからない。首をかしげるアーヴァインの耳に、先ほどの男の声が聞こえてきた。
《こちらエアステーション。ラグナロク応答せよ》
「はい」
《いくつか質問がある。我々は脱出ポッド回収をしている。事件のことは、だいたい把握している。ステーションの人間が、ラグナロクには乗っていないそうだな。そちらの人数を教えてくれ》
「2人です」
《・・・あんた、名前は?》
「アーヴァイン・キニアスです。ガルバディア・ガーデンの生徒の・・・」
《ガルバディア・・・? まあいい。もう1人は?》
「・・・・フィリアーノです。バラム・ガーデンのSeeD」
《? 魔女だな!? 魔女が乗ってるんだな!?》
ステーションの人間の言葉に、アーヴァインは愕然とする。今、なんと言った・・・? 恐る恐るを見れば、彼女は今にも泣き出しそうな表情だ。
「私・・・魔女になっちゃったの・・・。もう、アヴィとは一緒にいられない」
「・・・」
《ラグナロク、応答せよ!》
通信の声が、苛立っているように聞こえる。
「誰も、私に近づかなくなる・・・話しかけてくれなくなる・・・SeeDじゃなくなる・・・」
《魔女は帰還次第封印する。回収部隊の指示に従え》
「アヴィに・・・もう触れられない・・・」
《アーヴァイン、聞こえているな? 魔女も聞いているんだな?》
「・・・怖い。怖いよ、アヴィ・・・。帰りたくない・・・未来なんていらない・・・。“今”がずっと続けばいいのに・・・」
「・・・!」
ギュッと、アーヴァインはの体を抱きしめた。その体は震えていて・・・アーヴァインにすがりついてきた。
トラビアで、自分がみんなに言ったこと。
自分の前に伸びていた、いくつかの道。それを自分で選んで歩いてきた。選べる道は少なかった。
だけど・・・これは、正しい道だったのか。こんな風に、愛しい少女の手を離すことになるべき道なんて、選んだ覚えはなかったのに・・・。