6.一つの終焉

Chapter:4

 「あ〜! 、アービン! 何してたの〜??」

 ガルバディア・ガーデンの中に入ると、セルフィが2人を指差して声をあげた。

 「ううん、別に何も・・・」
 「何もってことはないだろ。2人で見つめあってたくせに」
 「スゥ!!」

 余計なことを言ったスコールに、が顔を真っ赤にし、アーヴァインは手で顔を覆った。

 「あらあら・・・大事な決戦を前に、ずい分とお暑いのね」
 「キスティ・・・!」

 からかうような口調のキスティスに、は声を荒げた。

 「もう! みんな、ふざけてないで! この奥に魔女がいるはずなんだから!」

 の言葉に、一同の顔が引き締まる。今は、はしゃいでいる場合ではないのだ。

 「この先にいるのは“敵”だ。“敵”の名前なんか忘れてしまえ」

 スコールが冷静な口調で、仲間たちに告げる。

 「“敵”と自分の関係とか・・・“敵”の事情とか考えるのはやめろ。そういうこと考えながら戦えるほど・・・少なくとも俺は強くない。“敵”は戦うことを選んだから、俺たちの“敵”になった。俺たちも戦うことを選んだ。選択肢は多くなかった。いや・・・多くなかったと思いたい」

 そこで、スコールは息を吐いた。

 「ここまで来たんだ。俺の話なんかいいよな?」
 「私は聞きたいなぁ。委員長の考えてること」

 まるで「さっきのお返しだ」とでも言いたそうなの表情に、スコールは仏頂面をし・・・首を横に振った。

 「終わってからにしよう。聞きたかったら・・・生き残れ」

 なるほど。それは未来への約束だ。

 「行こう」

***

 「ねぇ・・・魔女はどこにいるのかな?」

 リノアの素朴な疑問に、スコールが立ち止まって彼女を見る。だが答えたのはアーヴァインだ。

 「こういう場合、たいていのボスってのは最上階にいるものだよ」
 「じゃあ、上を目指すのね?」
 「上にはマスター・ドドンナが使っていた部屋がある。恐らく、そこじゃないかな」

 案内するよ・・・と言い、アーヴァインが歩き出す。
 近くにあった階段を上ると、そこには雷神と風神が立っていた。

 「お前ら、また・・・!!

 バラムでのことが思い出され、ゼルがとっさに身構えるも、2人は動かない。

 「早く行けだもんよ。・・・終わらせるもんよ」
 「・・・依頼」

 2人が力なくつぶやく。

 「・・・サイファーのこと頼むもんよ。もう、わけわからんもんよ。・・・元のサイファーがいいもんよ」
 「わかった」
 「・・・疲労」

 2人としても、バラム・ガーデンと戦うことに納得がいかなかったのだろう。
 自分の母校だ。そして、あのガーデンの風紀委員だ。それなのに、自ら風紀を乱すような行為をしたサイファー。もはや、彼も後戻りできないのだろう。

 「待」

 2人のそばを離れようとすると、風神が声をかけてきた。

 「渡物。受取」
 「え?」

 風神がG.F.を持っている。それを渡すというのだ。うなずき、スコールが風神からG.F.をドローする。パンデモニウムというG.F.だった。

 「サイファー・・・止」
 「わかってる。俺たちに任せろ」

 寂しそうに告げる風神に、スコールは力強く答えた。

 「そうだ・・・カードキーがないと、先へ進めない所あるもんよ」
 「そうなの〜?」
 「ガルバディア・ガーデンの生徒が、3枚のカードキーを持ってるもんよ。まずは3人を探すもんよ」
 「注意」
 「ガルバディア兵がウロウロしてるもんよ。気をつけるもんよ」
 「うん・・・ありがとう、2人とも」

 のお礼に、2人は顔を見合わせ、ホッとしたようにうなずき合った。
 雷神の言った通り、カードキーがないと先へ進めない場所があり、一行は手分けしてカードキーをもらいに、ガーデンの生徒を探しに行くことにした。
 3枚のカードキーということで、3組に分かれることにしたのだが・・・。

 「俺とセルフィ、キスティスとゼルとリノア、それととアーヴァインに分かれよう」
 「え!?」


 スコールの出した指示に、が咄嗟に声をあげた。

 「な・・・なんで私とアヴィが一緒なのよ!?」
 「後方支援と前衛だからだ」
 「じゃあ、リノアと交代してもいいでしょ?」
 「あんたとリノアじゃ大騒ぎしそうだからな」
 「しないわよ!」
 「・・・なんでそんなに拒絶するんだ?」
 「え・・・」

 スコールの指摘に、が黙りこむ。

 「そんなにイヤがったら〜アービンがかわいそうだよ〜」
 「そうだぜ! 好きな女の子にイヤがられるなんて、ショックだろ!」
 「あら、ゼル・・・! アーヴァインがを好きだってわかるの?」
 「見てればわかるもんね〜? ゼル?」

 セルフィ、ゼル、キスティス、リノアの言葉に、の顔がカァ〜・・・と赤く染まる。

 「こ・・・こんなことしてても時間のムダだわ! スゥの言う通りにしてあげるわ! さ、行くわよ、アーヴァイン!」
 「あっれ〜? “アヴィ”じゃないんだぁ?」
 「セルフィ!」

 これ以上、からかわないでほしい。
 はアーヴァインの腕を引っ張り、一同の視線から逃げた。

 「・・・なんか、ごめんね、」
 「何が!?」

 「・・・だって、僕のせいで・・・みんなにからかわれて」
 「別に、構わないけどね」

 ぶっきらぼうに答えるは、明らかに怒っているように見える。

 「・・・迷惑だった?」
 「もう・・・! 迷惑だったら、受け取ってないってば!」

 クルッと振り返ったの視界の隅に映ったのは、銃を構えたガルバディア兵の姿。

 「・・・ブリザガっ!!」

 精製したばかりの強力な魔法を放つ。氷柱がガルバディア兵を襲った。

 「あぶなかった〜」
 「しゃべってたから、気付かなかったんだね」

 気配を完全に消す効果の力を持つディアボロスはスコールがジャンクションしていたはず。つまり、自分たちとキスティスたちは、敵の存在にも気をつけなければならないようだ。

 「こうなったら、ノロノロしてられないわね! 早くカードキーを持ってる生徒をとっ捕まえましょ!」
 「・・・捕まえろって言ってたっけ?」
 「細かいことは、いいのよ! とにかく、アヴィ! ここはあなたのガーデンなんだから、ちゃんと案内してよね!」
 「でも、僕だってカードキーを持った生徒がどこにいるのかは知らないよ」
 「そんなこと、了解済みよ!」

 しゃべりながら歩いていれば、当然敵から見つかる可能性も高いというのに、先ほどの照れを隠すように、はしゃべり続けた。
 やがて、ようやくカードキーを持った生徒を見つけることができた。

 「・・・3」

 「3番の扉が開くのかな? カードキーの必要な場所なんて、通ったことないけどなぁ」

 の受け取ったカードキーを覗きこみ、アーヴァインが首をかしげた。

 「私たちが来るってんで、サイファーがご丁寧にカギかけてくれたんじゃない? あいつ、子供の頃に孤児院のドアにカギかけて、私たちのこと締め出したことあったでしょ」
 「ああ〜・・・あったね、そんなことが」

 子供の頃を思い出し、2人は笑う。なつかしい。ガキ大将だったサイファー。今は・・・魔女の騎士。

 「・・・スゥは気にするなって言ってたけど、実際は難しいよね」
 「そうだね。たぶん、スコールも自分に言い聞かせてるだけであって、本当はムリしてるんじゃないかな」
 「気にしたら、戦えないもんね。私も、強くないから。だから気にして戦えない。うん・・・戦えなくなる」

 幼なじみと、大好きだったまませんせいと。

 「・・・これはサイファーとまま先生を救うための戦いだよ。止めなきゃいけないんだ。僕たちが、止めるんだよ」

 アーヴァインがポンとの肩を叩いた。

 「約束してくれたよね? 、僕に返事してくれるって」
 「え? あ、うん・・・」
 「僕はそれをとても楽しみにしてるんだ。だから、がんばらないとね」

 負けるわけにはいかない・・・と。

***

 見事、カードキーを3枚手に入れたスコールたちは、先へ進むことにした。
 その途中、ホールの真ん中、吹き抜けになっている部分に、巨大な獣が尻尾をブンブンと振っていた。

 「・・・G.F.?」
 「こんなの、いなかったんだけどなぁ」

 アーヴァインが首をかしげる。G.F.の使用を許可されているのは、バラム・ガーデンのみだ。

 「サア・・・モット“力”ヲ・ミセロ!」

 3つの頭を持つ犬・・・ケルベロスだ。イフリートやディアボロスの時と同じように、スコールたちに襲いかかって来た。
 それを倒し、G.F.ケルベロスを手に入れる。

 「さあ・・・マスタールームへ急ぐぞ」

 スコールの言葉に、仲間たちはうなずいた。