6.一つの終焉

Chapter:2

 セントラにあるらしい、イデアの孤児院。そこを目指していたバラム・ガーデンは、セントラ大陸の海の近くに石の孤児院を見つけた。
 ガーデンを出て、イデアの孤児院へ向かおうとしていたスコールの前に、息を切らせたとセルフィがやって来た。

 「いいんちょ! 大変! たいへ〜ん!!」

 「スコール! 外見て、外!!」


 セルフィとがスコールに詰め寄り、口々にそう言う。2人のあまりの剣幕に、スコールは思わず後ずさり・・・ニーダからも「スコール! 見てくれ!」と声がかかった。

 『なんなんだ・・・一体』

 ハァ、とため息をつき、ニーダを振り返る。そんなスコールに、ニーダが双眼鏡を渡してきた。
 それを覗きこんだスコールの目に飛び込んできたのは・・・。

 「・・・ガルバディア・ガーデンか」
 「どうなるんだと思う?」
 「ガルバディアには魔女がいるんだよ〜」

 セルフィが声をあげる。そんなことは、わかっている。
 そして、向こうもこちらの存在には気づいているはずだ。そうなれば・・・。

 「戦闘は避けられない」

 やはりそうなるか・・・。わかってはいたことだけれど。
 がスコールを見やる。

 「これが最終決戦かな?」
 「・・・そうしたい」

 さて・・・こうなれば指揮官としてガーデンの生徒たちに指示を与える必要がある。ここにはちょうど副委員長のがいる。

 「スコール、。何か決まったら放送してくれ」
 「・・・ああ」

 ニーダの言葉にうなずき、スコールとは作戦を立て始める。

 「・・・でも、あくまでこれは仮説の上での指示だよ? 臨機応変にやらなきゃね」
 「わかっている」

 2人が出した作戦を、スコールが館内放送で告げる。

 《こちらはスコールだ。これは緊急放送だ。よく聞いてくれ。これからガルバディア・ガーデンとの、戦闘に入ることになりそうだ。剣接近戦検定2段以上は駐輪場で。MG検定3級以上は2階外壁デッキでそれぞれ待機。ウォームアップを怠らないように。奴らはたぶんここに乗り込んでくる。だから校庭と正門を固めて敵襲に備える。キスティス、ゼル! ブリッジに集合してくれ! 出席番号末尾が8の生徒は、年少クラスの世話を忘れるな!》

 スコールの指示が、館内に響き渡った。生徒たちは、それに従い行動を始める。

 「おいおいおい! なんで僕は呼ばれないんだ?」

 ブリッジの下から聞こえてきたのは、アーヴァインの声だ。
 スコールたち3人が下へ下りると、すでにそこにはキスティスとゼル、アーヴァインが待っていた。

 「僕だって仲間だろ?」
 「ああ、悪かった」
 「頼むよ、もう」

 アーヴァインが苦笑する。彼はSeeDではないし、バラム・ガーデンの生徒でもない。だが、それでも一緒に戦ってくれるのだ。

 「それで、私たちはどうすればいい?」

 キスティスが尋ねる。

 「俺たちが手分けして、他の生徒の指揮を執るつもりだ」
 「わかったわ」
 「俺は校庭の様子を見て来る。セルフィ、アーヴァイン、一緒に来てくれ」
 「りょ〜かい!」
 「とキスティス、ゼルは正門を頼む」
 「了解!」
 「敵との接触には時間がある。さ、校庭まで行くぞ。俺について来てくれ!」

 エレベーターで下りようとするスコールに、が「あ!」と声をあげた。

 「ね・・・リノアはどうするの?」
 「・・・任せる」

 エレベーターのドアが閉まった。

 「・・・任せるって、ねぇ。彼女は私たちのクライアントであって、SeeDでなければ、ガーデン生でもないんだけど」

 そんな彼女を巻き込んでしまうことになってしまった。カーウェイ大佐に知られたら、何と言うか・・・。
 だが、ゼルがを見て、肩を竦めた。

 「でもよ、ここで“リノアは大人しくしててくれ”って言って、言うこと聞くと思うか?」
 「・・・しないでしょうね。確実に」

 わたしも一緒に戦う!と、間違いなく言い出すことだろう。

 「とりあえず・・・リノアのもとへ行きましょう。どっちにしろ、1人にするのは危険だし」

 の言葉に、キスティスとゼルはうなずいた。

***

 リノアの部屋へ向かう途中で、ブリッジに向かおうとしていた彼女と遭遇した。

 「! さっきの放送・・・」
 「うん。ガルバディア・ガーデンが近くまで来てる」
 「わたしも、戦うから。守られるだけなんてイヤだから。わたしだって、戦えるから」
 「・・・うん。わかってる」

 予想していた言葉だ。驚きもしないし、反対もしない。

 「ただね・・・向こうのガーデンには、サイファーがいるかもしれない。リノア、彼と戦える?」
 「え・・・!」

 リノアの気持ちは、以前ガルバディア・ガーデンで聞いている。
 「恋している」と告げた、その言葉を・・・。

 「・・・戦わなくちゃ、サイファーを取り戻せないなら、わたしは戦うよ」
 「そっか・・・。リノアは強いね」
 「強くなんかない・・・。わたしは・・・たちには全然敵わない」
 「そんなことないよ」
 「ねえ、お二人さん? 仲がいいのはいいことだけど、そろそろ正門に向かわない?」
 「あ・・・」

 キスティスの言葉に、はスコールの指示を思い出した。

 「ごめん、ごめん・・・。さ、行こう!」

 正門へ向かおうとしたたちの耳に、ニーダの慌てた声が聞こえてきた。

 《スコール!! !! ブリッジに戻って来てくれ!》

 一体どうしたのか・・・。ニーダの様子はそうとう焦っているが・・・。

 「ごめん! 私は一度、ブリッジに戻る! 3人は校庭チームと合流して!」
 「了解!」

 キスティスたちが校庭へ走って行き、はブリッジへ戻った。

 「どうしたの!? ニーダ!」
 「あ・・・!」

 振り返ったニーダが双眼鏡をに差し出す。それを覗きこめば、ガルバディア・ガーデンのテラスに誰かいるのが見えた。
 と、背後に人の気配。スコールが戻って来たのだ。

 「・・・戻ってたのか、
 「うん。これ見て、スゥ」
 「・・・・・・」

 の呼び掛けに、スコールが眉根を寄せる。当のは「何?」と首をかしげた。

 「・・・いや」

 双眼鏡を受け取り、平静を装う。

 『・・・今、こいつ“スゥ”って呼ばなかったか?』

 それは子供の頃の懐かしい呼び名だ。だが、今はそれを言及している場合ではない。
 双眼鏡を覗く。見えたのはコートを着た、金髪オールバック。額の傷。

 「・・・サイファーか」
 「向こうはサイファーが指揮してるぞ。奴ら、正面から来る気だ!」
 「このまま進め」

 スコールの指示通り、ニーダはガーデンを前進させ続けた。
 と・・・ガルバディア・ガーデンの方から何かが飛んでくる。砲撃か?と思ったそれは、バイクに乗ったガルバディア兵だった。
 バイクの煙を上げながら、ガルバディア兵が次々に乗り込んでくる。
 ブリッジの目の前には、ガルバディア・ガーデンが迫って来ていた。

 「ダメだ! ぶつかる!」
 「右へ!」

 スコールの声に、ニーダは右へ方向転換させる。急な方向転換に、ガーデンが大きく揺れた。

 「キャッ!」

 が悲鳴をあげ、バランスを崩す。その手をスコールが掴んだ。

 「ありがと、スゥ」
 「・・・いや」

 それよりも、彼にはすることがある。

 《敵ガーデンとすれ違うぞ! 校庭攻撃班! 気をつけてくれ!》

 スコールが校庭にいる仲間たちに声をかけた。

 「私たちは、正門へ行きましょう! あそこからも敵が来るはずよ!」
 「・・・ああ」

 だが、こちらは2人だ。少々、分が悪い。

 《セルフィ、アーヴァイン、正門へ応援に来てくれ》

***

 ブリッジを下り、正門へ向かうとシュウが走って来た。

 「スコール! 正門から敵が来る!」

 やはり、が読んだ通りになったか。
 カードリーダー前へ行けば、目の前には旋回するガルバディア・ガーデンの姿。

 「ぶつけてくるつもりかしら・・・?」
 「こっちへ乗り込んでくるだろうな」

 セルフィとアーヴァインが合流する。と、同時に再び館内放送が入った。

 《スコール、聞こえるか! 教室が敵に襲われている! あそこには年少クラスがいるんだ。早くなんとかしてやらないと!》

 次々に来る危機に、さすがに混乱しそうだ。まずは・・・。

 「スゥ、セフィと教室へ。ここは私とアヴィに任せて」
 「え・・・?」
 「大丈夫よ、任せて。それより急いで! 年少クラスが心配だわ!」

 しっかりしたに、スコールは安心してうなずいた。

 「・・・頼む」
 「了解」

 敬礼をし、はスコールに微笑みかけた。