4.大切なこと
Chapter:4
「先輩・・・よかった・・・助かった〜!!」
「ホント、間一髪だったわね。スコールたちは?」
「えっと・・・」
辺りをキョロキョロと見回したとゼルのもとに、スコールたちがやって来たのは数秒後。
再会を喜ぶ一同に、銃弾が飛んできたのは、これまた数秒後だった。
「うわわ!! これじゃ身動き取れねぇぜ!?」
ゼルが声をあげ、後方を確認する。スコールとキスティス、セルフィが屈みながら近づいてきていた。
「ゼル、無事〜??」
「ああ、先輩のおかげで・・・」
「だが、この状況を何とかしないと・・・」
言いかけたスコールだが、飛んで来ていた銃弾がやみ、「うわーっ!」という悲鳴が聞こえてきた。
「まったくもう・・・もったいぶって・・・!!」
「え?」
が怒りながら階段の方を見る。スコールたちもつられてそっちを見れば・・・そこにはアーヴァインの姿があった。銃をガルバディア兵に向け、見事に倒すと両手をあげて、得意気にしてみせた。
「何、カッコつけてん・・・のよっ!」
そのアーヴァインの背中を、リノアが蹴りつければ、彼は階段をごろりと転げ落ちた。
「アーヴァインがもうチョット、早く納得すれば、ここまで面倒になってないんだよ」
両手を腰に当て、説教モード。と説得(?)し、ようやくここまで戻って来られたのだ。文句も言いたくなる。
「リノア、無事だったの?」
キスティスが声をあげる。いきなり連れ出されてしまった彼女を、キスティスたちは心配していたのだ。
「ん、んん。そりゃそうさ。僕が連れ出したんだからね」
「どういう事だ? それに、先輩も・・・」
「それは・・・」
「わたしの父が、ガルバディア軍を通じてしたことなの。わたしだけ、ここから連れ出すようにって命令したらしいの」
「それで・・・」
「それで、この男、命令通りにわたしだけ連れ出したのよ。スコールたちが捕まってるの、知ってて」
「いや、それは・・・」
「ねぇ、ひどいと思うでしょ?」
アーヴァインの言葉を遮って、言葉を発するリノアに、アーヴァインは困った表情を浮かべた。
「ああ!! もう悪かったって。だからこうして助けに来たじゃないか」
「わたしとがうるさく説得した後にね」
「うっ・・・」
「それで? は一体今までどこに?」
キスティスがに目を向けると、一同の視線が彼女に向いた。
「私もリノアと同じようなものよ。誰かお偉いさんに命令されて、魔女戦後に私だけ連れ出したんですって」
「あ〜! その辺の詳しい事情は、僕にも話せないからね! とにかく、逃げ出すなら今のうちだ」
「ダメだ。地下の扉は砂で埋まってた」
先ほどの様子を思い出し、スコールが告げる。
「そりゃ、そうさ。この刑務所は今は潜ってるからね」
「潜って?」
「そっ、この刑務所は・・・」
「いたぞ!! 脱走兵だ!!」
アーヴァインの言葉を遮るようにして、ガルバディア兵の声が響く。援軍が来てしまったようだ。再び銃弾が飛んでくるのを、アーヴァインが迎え撃つ。
「スコール! 君たちは上に先行してくれ。ここは僕が引き止める」
「上?」
「詳しい説明をしてる時間はないんだよ〜! 出口は上だから、信じてくれよ〜」
「・・・わかった」
アーヴァインの言葉に、スコールはうなずき、仲間を見る。
「わたし、案内できると思う!」
リノアが自信を持って、そう告げる。先ほど、アーヴァインたちとここまで来たのだ。スコールはうなずいて、リノアに案内を頼むことにした。
「スコール、私はアーヴァインとここに残る」
の言葉に、アーヴァインが目を丸くする。まさか、彼女がそんなことを言うとは・・・。
「スコールたちは上へ! 早く!」
スコールたちはうなずき合い、階段を上って行く。残されたのは、アーヴァインと。
「君が僕と残ってくれるなんてね〜」
「軽口叩いてないで、がんばりなさいよね!」
そう言うと、はアーヴァインにプロテスの魔法をかけた。これで万が一、向こうの銃弾が当たっても大したダメージにはならないだろう。
「それじゃ、にいいとこ見せちゃおうかな!」
ニッコリ笑い、物陰から飛び出し、アーヴァインはガルバディア兵たちに銃撃をお見舞いした。
***
スコールたちが上へ行き、数分・・・いくらでも湧いて出るガルバディア兵の支援に、さすがのアーヴァインとも辟易していた。
「あちゃ〜、きりがないね」
「どうする? このままじゃマズイんじゃない?」
「う〜ん・・・」
考え込む間にも、2人には銃弾が飛んでくる。
「そうだ・・・僕にいい考えがある」
「え?」
「ついて来て」
援護をし、を先に下へ向かわせると、アーヴァインも彼女の後を追った。
「これこれ、このアーム」
アーヴァインが向かった先は、先ほどスコールたちが地下へ行くのに使ったアームだ。
「さ、乗って」
「で・・・どうするの?」
「上の制御室にスコールたちがいれば、これを動かしてもらえる」
「・・・スコールたちがいなかったら?」
「ま、なんとかなるよ〜」
気楽なアーヴァインに、は思わず深いため息をこぼしてしまう。
「お〜い、スコール、聞こえるか〜」
アーヴァインが通信機を使って呼びかけるが、スコールがそこにいなければ、使えない手段だ。
「お〜い、お〜いってば〜」
「・・・スコールたち、いないんじゃないの?」
「そんなことないと思うけど・・・」
《聞こえてるぞ》
聞こえてきたスコールの声に、アーヴァインが顔を輝かせる。
「やりぃ〜。ほら大丈夫だったろ? スコール、アームの上昇許可をそこから出してくれ」
《どうやって?》
《おっ、オレに任せな》
ゼルの声がする。と、何かのボタンが押されたのだろう。アームがゆっくりと上昇していく。
「おっけー。じゃあ、すぐ行くから待っててねぇ」
「なんか、ずい分とゆっくりね」
「ま、の〜んびり行きましょ」
あっけらかんと言い放つアーヴァインに、は肩をすくめた。
「・・・ねぇ、」
「なに?」
通信機のスイッチは切る。スコールたちには聞かれたくない。
「君にとって、SeeDって何?」
アーヴァインの問いかけに、は目を丸くする。そんなこと、考えたこともなかった。
ガーデンに所属する以上、目指すものはSeeDだと、そう思っていたから・・・。
「・・・自分の存在を証明してくれるもの、かな」
「証明?」
「うん。ほら、私って家族いないでしょ? 1人で生きてきた。自分が何者なのか・・・私にはわからない。だけど、私は“SeeD”なの。“SeeD”っていう、立派な自分が存在してるの」
「・・・自分の過去のこと、考えたりしないの? 家族のこととか」
「考えたって仕方ないわ。思い出そうとしても、思い出せないんだもの。敢えて言うなら、バラム・ガーデンのシド学園長が家族みたいなものかな?」
「・・・・・・」
「どうして、そんなこと聞いたの?」
キョトンとした表情で、がアーヴァインに問う。唐突な質問だったので、驚いた。
「・・・僕もSeeDを目指そうかな〜」
「あら、いいじゃない。あなたの銃の腕前なら、実地試験で優秀な成績を収められるわよ。あとは筆記試験ね」
「う〜ん・・・筆記は苦手だなぁ・・・。覚えるのが」
困った表情でつぶやくアーヴァインに、はクスクスと笑った。
「大丈夫よ、アーヴァイン。受験資格を得てから、毎回試験受けて、毎回落ちてる候補生がいるんだから」
「えぇ〜? それもすごいねぇ・・・」
もちろん、それはサイファーのことだ。はサイファーと親しいわけではないが、その辺の話はキスティスに聞いて知っている。
「だから、アーヴァイン・・・がんばって! 実地試験、一緒に行こう?」
「・・・」
「私、バラム・ガーデンで待ってるよ!」
ニッコリ微笑むの表情に、アーヴァインは苦笑で応えた。
「・・・僕・・・」
「うん?」
「僕は・・・君のこと・・・」
アーヴァインが何かを告げようと、の手を握る。その温もりに、はドキッとした。
「アーヴァイン・・・?」
アーヴァインが口を開いて何かを伝えようとした瞬間、
「〜! アーヴァイン〜! 無事〜??」
アームの入り口が開き、明るい声のセルフィの登場に、2人は見つめあったまま、固まってしまったのだった。