Only one,Only you

Chapter:5

ドリーム小説  「エルオーネ・・・! エルオーネがいるのか!?」
 「知ってるのか?」

 男が目を丸くしてラグナに尋ねる。

 「知ってるも何も・・・彼女を捜していて・・・ここに来たようなもんだ」

 キロスの言葉に、ウォードもうなずいた。

 「どこにいる!? エルオーネは、今どこにいるんだ!?」
 「オダイン博士なら、きっと居場所を知っていると思いますが・・・」

 研究員がつぶやくと、ラグナは「よしっ!」と拳を握った。

 「オダインだな!? さっきのおっさんだな? よし、戻るぞ!! あんたたちには迷惑をかけたな。今のうちに逃げた方がいいぜ。じゃあな!」
 「ちょっと待ってくれよ! 助けるだけ助けておいて、それはないだろ?」

 研究所の中へ戻ろうとしたラグナに、男が慌てて呼び止めるように声をあげた。

 「そのエルオーネって娘さんを捜しているんですね? だったら、いずれ仲間が必要になる時が来ますよ。エスタの国・・・いや、アデル相手にあなたたち3人だけじゃ・・・つらいと思います。どうですか、ワタシたちにも協力させてくれませんか? 腕は無理ですが、知識と情報なら、いくらでも・・・」
 「悪くない・・・相談だと思うが・・・」

 チラッとラグナに刺すような視線を向け、キロスがつぶやく。

 「私たちはエスタに対してあまりにも無知だ。この前のように・・・街中で捕まるのは、私は二度とごめんだ・・・。きっとウォードだって、そう思っているさ」
 「・・・・・・」

 うんうん、とウォードがうなずく。2人の視線を受け、ラグナが「あ・・・う・・・」と、言葉に詰まった。ラグナに振り回されるのは、いつものことだが、今回のようなハプニングは避けたい。特に今はエルオーネを捜す・・・という重要な任務があるというのに。

 「・・・よし、わかった! あんたたちにも手伝ってもらう。けど、その代わりと言っちゃなんだが・・・。オレもあんたたちの“反アゼレ派”とやらを、手伝わせてもらう!」
 「・・・・・・」
 「“ア・デ・ル”・・・だ。“いいかげん、1文字しか合わないのは、恥ずかしいからやめろ・・・”と、ウォードが言いたそうにしている視線を痛いほど感じないか、ラグナ君」
 「あぁ、あぁ、感じてるよ! いつだって感じてるさ! でもよ、名前なんかどうだっていいんだ! 中にこもってるハートが大事なんだよ、ハートが! それさえしっかりしてりゃ、なんだって大丈夫なんだよ!」
 「・・・あぁ・・・その通りだ!」

 ラグナの叫びに、男が感銘を受けて、うんうんとうなずく。

 「なんだか、むちゃくちゃだけど、あんたいい! やっぱり・・・あんたに引っ張っていってもらいたい・・・勝手な希望だが・・・」
 「よし、任せろ! エルオーネが見つかったら、そいつを引き受けてやるぜ! じゃあ、ちょっくら、オダインに聞いて来るから、待っててくれ!」

 そう言って、フト、冷静になり、ラグナは頭を掻いた。

 『また、やっちまった! 軽く返事するのは、オレの悪いクセだ・・・。でも・・・今までだって、なんとかなったし、まぁ、なんとかなるか?』

 どこまでも前向きで楽観的なラグナであった。

 「エルオーネって子は・・・よっぽど大事な彼女なのか・・・?」
 「ん・・・? あぁ、そんなところだ」
 「ラグナ君・・・。見栄を張るのは大人げないぞ・・・」

 男の問いかけに、ラグナがそう答えると、キロスが冷静な声でそう言った。

 「父と娘のような関係・・・と普通は言うな」
 「エルはちっちゃくても、立派な“れでぃ”だ。“父と娘のような関係”などと、野暮ったい名称で呼ぶと、彼女は怒るだろ? だから“大事な彼女”というのは、見栄というより、恐怖におののいて、って感じだ」
 「とても・・・嘘クサイが・・・確かに、彼女を怒らせるのは、得策ではないのは事実だ」
 「だろ〜? ・・・覚えてるか? あの“Jの悲劇”・・・」
 「ああ・・・。軽く怒らせた時、靴にジャム仕込まれて、お前・・・本当に半泣きになっていたな・・・」
 「今・・・思い出しても、鳥肌が立つぜ」

 ブルッとラグナが身体を震わす。それを聞いていた男は、ボソッとつぶやいた。

 「な、なんか・・・スゴそうな彼女・・・だな」

***

 再び研究所の中に入ると、先ほどまでいたオダインの姿がそこにはなかった。

 「・・・? どこに行ったんだ?」

 とりあえず、下に行ってみっか〜・・・とエレベーターで下りると、やはりそこに目的の人物はいた。

 「オダイン博士! エルオーネの居場所は・・・どこだ!!」
 「自分で戻って来るとは・・・」
 「いい心がけだな・・・」

 オダインの傍にいた警備兵が襲ってくるも、武器を持ったラグナたちの敵ではない。
 警備兵たちを倒し、ラグナたちはオダインに詰め寄った。

 「なんでおじゃる! エルオーネなんか・・・知らないでおじゃる。・・・うそでおじゃる! エルオーネ・・・知ってるでおじゃる」

 そう言い残し、オダインがエレベーターに乗り込む。

 「おい! 待て! エルオーネの居場所は・・・どこだっつーの!!」

 慌ててラグナたちもエレベーターに乗り込んだ。エレベーターが着くと、あっという間にオダインが研究所を出て行く。

 「おい! 待てよ・・・どこか教えろって!」

 立ち去ろうとしたオダインを、ようやくとっ捕まえ、ラグナが問い詰める。

 「・・・“オダ研”でおじゃる! エルオーネはそこにいるでおじゃる」

 オダインの言葉に研究員がラグナの耳元で「オダイン博士の研究所のことですよ」と教えてくれた。
 ラグナが手を話すと、オダインは脱兎のごとく逃げ出した。
 研究所の場所を教えてもらい、ラグナたちはそこにあった車に乗り込んだ。男が運転席に座る。
 しばらく走ると、教えてもらった研究所が見えて来る。ラグナは、いても立ってもいられず、咄嗟に車から飛び降りた。ギョッとしたキロスとウォードだが、彼を1人にしておけない。続いて飛び下りた。
 車は少し走り、ブレーキを踏んだ。
 ラグナはそちらへは目もくれず、研究所へ駆けこんだ。

 「ここ・・・だよなぁ? なんか妙な所だな・・・。な? あれ? あいつは?」
 「私たちを捜してると思うけどな・・・」
 「・・・・・・」

 ウォードが呆れたような眼差しをラグナに向けた。

 「まぁな、普通は車から飛び降りないよな・・・」
 「いや〜、思わず突っ走っちまったかぁ。あいつ、無事だといいけど」
 「それより私たちの方が・・・」

 気づけば、警備兵がラグナたちの背後に立っていた。
 あっさりとそれを倒し、部屋の中央にあったベンチのようなものに座ると、それが浮き・・・2階の部屋へ運ばれた。

 「あら〜」
 「!」

 そこにいた警備兵を倒し、モニターを見上げたラグナは「あ!」と声をあげた。

 「エルオーネ!! エルオーネ!! エルオーネ!! くそぉ、聞こえないか」

 そこに映っていたのは、座りこみ、泣きじゃくる幼い少女・・・エルオーネの姿だった。
 ラグナはモニター前の機械をいじる。よくわからないが、適当に押してやると、ドアが開いたようだった。
 エルオーネのいる部屋は、1階の奥にあるようだ。再び、動くベンチで1階へ。

 「エルオーネ!!」

 部屋の中へ走りラグナが叫べば、泣いていたエルオーネが顔をあげた。

 「ラグナおじちゃん!」

 泣き顔が、瞬時に笑顔に変わった。

 「ちゃんと、助けに来たぜ・・・。ちーっとばかし、遅くなっちまったけどよ・・・」

 小さなエルオーネの体を抱きしめ、ラグナがつぶやいた。
 大事な大事なエルオーネ・・・。無事に再会できた。
 さあ、戻ろう。ウィンヒルへ。レインのもとへ・・・。