Only one,Only you

Chapter:3

ドリーム小説  結局、エルオーネには会えず、スコールたちはバラム・ガーデンに戻って来た。
 リノアは森のフクロウの2人と共に残るかと思ったが「が心配だ」と言い、結局スコールたちと一緒に行くことになった。
 ティンバーの解放は、もう少し先になりそうだ。

 「エスタの大陸は、大陸全土が大きな山に囲まれてるわ。静かにそびえたつ山が、大陸を隠してるの。人々の出入りもほとんど無いわ。そんな所も沈黙の国と呼ばれる由縁になっているわ。多分、ガーデンの飛行高度じゃ、山を越えて大陸内に入れないと思うわ。確か、エスタ大陸に入る道は1本、F.H.から伸びている長い線路。F.H.は昔、エスタと唯一交流があったの。その名残ってわけね」

 エスタへ向かう・・・とスコールは決めたのだが、キスティスのその言葉に黙りこんだ。
 F.H.の線路には、もはや列車は走っていない。歩いて行くしかないのだ。

 「少し、考えてみましょう。エスタに入る方法。他に何か見つかるかも」

 キスティスの言葉に、スコールたちは黙ってうつむいた。

***

 アーヴァインは黙ってを見つめていた。
 キスティスたちは、ガーデンで行く以外のエスタへの入国を思案中だが、アーヴァインはエルオーネにを救う可能性があるのなら、すぐにでも彼女に会いたいと思っていた。

 「・・・ねえ、みんな。聞いてくれるかい?」

 スコールたちをの部屋に呼び、アーヴァインがそう切り出した。

 「スコールが、エルオーネの力の可能性を話してくれただろう? 僕は、スコールのその考えに乗ってみようと決めたんだ。・・・エスタへ行く。F.H.の線路を歩いてね」
 「え・・・? でも、どれくらいの距離があるのか、わからないのよ?」
 「うん、それでも僕は行くよ」

 キスティスの言葉にうなずき、アーヴァインは力強く言った。

 「勝手に出て行ったら怒られるだろうと思ったから・・・君たちに伝えておこうと思った。ごめんよ、みんな」
 「・・・もしかして〜、アービン1人で行こうとか考えてる〜?」
 「・・・え?」

 セルフィの言葉に、アーヴァインが目を丸くする。そんなアーヴァインに、リノアが腰に手を当て、もう!と非難の声をあげた。

 「言ったでしょ! わたしたちだって、が心配だ、って! アーヴァイン、1人で何カッコつけてんのよ!」
 「エスタに行くなら、オレたちも行くぜ!」
 「・・・エルオーネのことを教えてやったのは俺だぞ。俺を置いていくつもりか?」
 「・・・みんな」

 当然、キスティスもついて行くつもりだ。仲間たちの温かい言葉に、アーヴァインはそっと目を閉じた。

 「ありがとう・・・みんな」

***

 ガーデンのF.H.に移動させ、ホライズン・ブリッジへ向かう。
 眠っているは、アーヴァインが背負って行くことになった。大変だろうが、そうするしかない。

 「う〜わ〜! 長いねぇ〜!」
 「・・・先は見えないな」
 「でも・・・行くしかない」

 うん、とうなずき、6人は歩き出す。モンスターの気配がないだけ、助かった。

 「の寝顔、カワイイね」
 「ずるいなぁ、リノア・・・。僕は今、見えてないんだよ」
 「でもさぁ〜もしかしたら、王子様がキスしたら、目覚めるかも〜?」
 「セルフィ」

 とりとめもない話だが、からかうようなセルフィに、スコールが注意した。

 「お待ちなさい、私の子供たち」

 背後から聞こえてきた声に、6人が驚いて振り返る。そこにいたのは魔女イデア・・・ママ先生だ。

 「エスタへ行くのですね? 私も行きます」
 「ママ先生も? エスタで何をするんですか?」

 イデアの言葉に、スコールが尋ねる。イデアは毅然とした態度で言葉を続けた。

 「オダイン博士に会いに行きます」
 「・・・オダイン?」
 「あ・・・! オダイン・バングルの人?」

 リノアが声をあげると、イデアはうなずいた。魔法関係に強いと言われている人物だ。

 「その人に、会ってどうするんですか?」
 「魔女アルティミシアは生きています。彼女はいつでも私の身体を支配することができます。そうなったら私は・・・。私はまた恐怖を振りまく存在になってしまいます。私だって自分はかわいい。自分の身は守りたい。叶うならば、魔女の力を捨ててしまいたい。オダイン博士ならその方法を、知っているかもしれない。私を救ってくれるかもしれません」
 「・・・わかりました。一緒に行きましょう」

 アーヴァインとスコールが顔を見合わせうなずく。

 「でも・・・このまま歩いて行って、本当にエスタに着くのかな〜?」
 「・・・俺とセルフィで少し先まで見に行ってくる」

 グイ、とセルフィの腕を引っ張り、スコールが告げた。

 「ん? わかった〜。りょ〜か〜い! 行こ、行こ!」

 逆にスコールの腕を引っ張り返し、セルフィが元気よく走って行った。

 「・・・私たちは、少し休みましょう。アーヴァインもを背負って疲れてるだろうし」

 いくら軽いとはいえ、長時間背負っていれば、他の人より疲労もたまる。
 を地面に下ろして、アーヴァインはため息をつき・・・の寝顔を見つめた。

 「あら、アーヴァインったらのこと見つめちゃって」
 「ねぇねぇ、とはどこまで行ったの〜?」

 キスティスとリノアがからかうような言葉をかけてくる。アーヴァインは苦笑を浮かべた。

 「残念ながら、どこまでも行ってないよ。お友達のまま」
 「え・・・でも・・・」
 「から、明白な言葉はもらってないんだ・・・。魔女イデアを倒したら、その時に答えるって」
 「・・・あ、ご、ごめん、アーヴァイン。わたし・・・」
 「気にしないで、リノア。返事が少し、先延ばしになっただけだから」

 アーヴァインの優しい言葉と笑顔に、キスティスとリノアは何も言えなくなってしまった。

***

 しばらくすると、スコールとセルフィが線路の先から走って戻って来た。

 「おかえり、お2人さん」
 「ただいま〜!」
 「報告する。線路はこの先、そんなに続いていない。だが・・・」
 「エスタって、この大陸にある、おっき〜い国のはずなんだけど、全然見つからないんだよ〜」

 セルフィが困ったような表情を浮かべ、告げると、スコールもうなずいた。

 「北と南には何もなかった。次は東へ行ってみよう」

 スコールの言葉に、仲間たちはうなずいた。
 確かに、報告の通り、線路はしばらく歩くと終わった。出た場所は一面真っ白な世界。“大塩湖”と呼ばれる場所だ。いたるところに恐竜の骨が転がるそこは、静寂に包まれていた。

 「街なんて見えないね〜」
 「思ったより長い旅になりそうですね」

 セルフィがキョロキョロ見回すと、イデアがつぶやいた。

 「大丈夫ですよ! どんな敵が現れても、オレたちがちゃんと護衛しますって!」
 「ありがとう、ゼル。あなたたちにお願いがあります。私は・・・私自身でいる限り、何も問題はないの。けれどもアルティミシアが私に入って来たら・・・わかるでしょ? みんな・・・その時はお願いね」
 「あれ〜? なんか空気が重いよ〜! これは誰かを倒しに行く旅じゃないんだよ〜。みんな幸せになるための、旅なんだよ〜。こんなの初めてじゃない? だからっ、もっと元気に行こ〜!」

 重くなった空気を払しょくするように、セルフィが明るい声をあげた。それにスコールもうなずく。

 「・・・悪い事は言葉にすると、本当になるって誰かが言ってた」

 それは、エスタ兵に追いつめられた時、ラグナが言っていた言葉だ。

 「迷信なんだろうけど今は信じたい。だから・・・何も言うな」
 「・・・うん、僕もそう思うよ。みんな、本当にありがとう。こんな僕に気を遣ってくれて」
 「何言ってんだよ! オレたち、仲間だろ!」

 ゼルの言葉に、アーヴァインは微笑み「そうだね」と答えた。
 を背負ったアーヴァインは戦闘に参加せず、スコールたちが相手をすることになった。
 とは言っても、ディアボロスの能力のおかげで、普通のモンスターには姿が見えないのだが。
 途中出てきた骨のモンスターも、アンデッドの特性を知ってしまえば対処もラクだ。エリクサーを投げつけて一撃である。
 道なりに進んでいくと、突然どこからかバシンと火花が散るような音がした。

 「・・・何?」
 「なんだろ・・・?」

 キスティスとリノアが顔を見合わせる。音はやまない。それどころか、青空に六角形の歪みが見えた。

 「これ、なんだろ〜?」

 セルフィが、空間にぽつんと浮かんだスイッチを押そうとする。スコールが慌てて「おい、不用意に触るな」と注意をするが、遅かった。
 ポチッとセルフィがスイッチを押すと、一同の頭上に黒い穴。空間に穴が開いたのだ。

 「道が・・・開けた・・・?」
 「わ〜い! あたしのおっかげ〜!」

 スコールのあ然とした声に、セルフィが明るく声をあげ、空間の下にハシゴがあることにも気づく。

 「ほらほら、みんな! 行くよ〜!」

 物怖じせず、元気よくハシゴを上って行くセルフィの後を、リノア、ゼル、キスティスと続く。

 「ママ先生、先へ」
 「ええ、ありがとう、スコール」

 イデアがハシゴを上って行く。スコールがアーヴァインを振り返った。

 「を背負いながら上れるか?」
 「なんとかね」
 「よければ手伝うが・・・」
 「を荷物みたいに運ぼうって? 女の子にそんなことしちゃダメだよ」

 苦笑を浮かべ、「お先に失礼」と、器用に片手での身体を支え、ハシゴを上って行った。
 中は1本道。だが、先へ行ったセルフィが早速何かをいじっていた。

 「おい・・・」
 「見て見て〜! このパネルをたくさん並べて、何もないように見せてたんだよ〜!」

 セルフィが指差した先には、先ほど見た光景。青空と白い大地。なるほど、カモフラージュだったのか。

 「でも・・・こんなことをする理由って何かしら?」
 「俺にだってわからない。そのうちわかるさ」

 通路を歩いて行くと、行き止まりだ。7人がそこに乗った瞬間、ガクンと六角形の床が動き出した。それと同時に目の前に風景が広がり・・・見たこともない大都市の中を床が移動していく。

 「うわぁ〜! なんなんだろうね、これ!」

 セルフィが感嘆の声をあげるが、他のメンバーはキョロキョロとし、目を丸くしている。
 やがて、動いていた床が止まる。どこかへ続く道の前で止まり、7人は床から下りた。

 「・・・これだけ発達した都市なら、俺たちが侵入したことくらいバレてるはずだ。俺たちを敵として攻撃してくるかもな。周囲には気をつけろ」

 うん、と一同がうなずいた次の瞬間・・・スコール、ゼル、アーヴァインを眠気が襲ってきた。

 「うっ・・・こんな時に・・・来るとは・・・。これは・・・まずいな・・・」

 エルオーネ・・・時と場所を考えてくれ・・・倒れる中、スコールは届かないと知りながらも、エルオーネに文句の声をあげていた。