絶対に手に入れてみせる・・・。
アイツには、渡さない・・・。
君は、ボクのもの・・・。
・・・ボクは、君のものだよ・・・。
I’m yours
「ッ!!」
名前を呼ばれ、足を止め、振り返る。
その動きに合わせて、彼女の長い黒髪がサラリと肩をすべった。
「シン・・・おはよ」
「おはよ、。今日も早いね」
「うん。ルナにレポート見せてくれって頼まれてるの」
「あいつ、またに頼ってんのかよ・・・。ったく」
アカデミーへと続く道を、いつものように並んで歩くシンと。
傍から見れば、“恋人同士”のようだが、実はこの二人は“友達以上、恋人未満”の関係である。
「、ルナが迷惑だったら、ちゃんとオレに言えよ? オレが、ガツンと言ってやるからっ!」
「大丈夫だよ、シン。全然迷惑なんかじゃないから」
ルナマリアを庇い、ニッコリ笑うに、シンはそれだけでメロメロになってしまう。
つられるように笑みをこぼし、少しだけに体を寄せて歩く。
「ねぇ・・・・・・?」
「ん〜?」
「今度の休みの日・・・何してる?」
「何って・・・別に、用事ないから、部屋でボーッとしてると思うけど・・・」
「じゃあ・・・さ・・・」
不意に、シンがの手に触れ、その手を握り締めてくる。
突然のことに、はドキッとし、緊張に体を強張らせた。
「・・・オレと・・・その・・・」
「うん・・・」
「デート・・・しない?」
「!!!」
告げられた言葉に、は驚いて足を止める。
彼女と手を繋いでいたシンは、少し遅れて足を止めた。
「・・・迷惑?」
「ううん・・・迷惑なんかじゃない・・・。うれしいよ・・・」
「えっ!?」
の言葉に、シンはドキッとする。
これは、もしかして・・・もしかして・・・!!?
「・・・オレ、のこと・・・!!!」
「おはよう、!!!」
聞こえてきた声に、シンはギョッとし、は視線を声の主へ向けた。
「アスラン・・・!」
「こんな場所で立ち止まってたら、通行人の邪魔だぞ? さぁ、行こうか」
「え? あ、ちょ・・・」
ズカズカと笑顔を浮かべながら歩み寄ってきたアスランは、引き剥がすかのようにの肩を抱きしめ、シンとが繋いでいた手を、身を持って引き離した。
「ちょっと! アンタ・・・!!!」
「“ザラ先輩”だろ? シン・アスカ君。君は、いつになっても先輩に対する態度がわからないようだね」
「何が先輩だっ! このロリコン!!」
「ロ・・・ロリコン!!? オレとは一つ違いだ。それを言うなら、おまえは年増好きか?」
「オレとだって一つしか違わないっ!! だいたい、を年増だなんて、失礼だろっ!」
「大切な幼なじみを、君みたいなお子様に渡すわけにはいかないんだ。悪いが、に近づかないでくれないか?」
「なんだとぉ〜!!?」
バチバチ・・・!と火花を散らすシンとアスランに、はどうしたもんかと困ってしまうが・・・。
「はい、そこまで〜っ!!」
ベリッと二人を引き剥がしたのは、褐色の髪の少年。
は、顔を輝かせ「キラ!!」と少年の名前を呼ぶ。少女にとって、この少年の存在は“救いの神”だったのだが・・・。
キラと呼ばれた少年の姿を、シンとアスランが認めた瞬間、二人の表情が一瞬にして凍りついた。
「キ・・・キ・・・キラ・・・!!!」
「お、おはようございますっ!!! ヤマト先輩っ!!!」
アスランは後ずさりをし、シンに至っては深々と頭を下げ、挨拶をする。
そんな二人の様子を、キラは満面に笑みを浮かべた状態で見つめる。
「おはよう、シン君・・・。アスラン? 君は挨拶すらしてくれないわけ? 大事な幼なじみである、僕に」
「あ・・・お、おはよう・・・キラ」
「おはよう」
ニッコリと微笑むキラだが、アスランにとっては、この笑顔こそが一番恐ろしいキラの表情であった。
「、ダメじゃないか。アスランなんかと一緒にいちゃ」
「え・・・? なんで??」
「変なことされたらどうするの? ザラ家の男は危険なんだから、下手に近づいちゃダメだよ。核攻撃とかされちゃうよ?」
笑顔で物騒なことを言うキラに、アスランは視線で対抗するが、細められたアメジストの瞳に、慌てて視線を逸らした。
「それに・・・シン君だって、男の子なんだからね? どっか連れ込まれたらどうするの」
「えぇ〜?? 大丈夫だよぉ。だって、シンってばカワイイんだも〜ん♪ なんか、ついつい・・・」
「・・・へぇ〜? カワイイ・・・ねぇ・・・」
「っ!!!」
の言葉に、キラがその瞳をシンに向けた。
途端に、シンはまるで金縛りにあってしまったかのように、体が動かなくなってしまう。
「おめめが赤くて〜髪の毛が黒いから、黒ウサギちゃんみたいでしょ??」
「・・・だから、カワイイんだ?」
「うん! 私、シンのこと大好きよ?」
あぁ・・・哀れなり、シン・アスカ・・・。
アスランは、この二つ年下の後輩に心から同情した。
シンは気づいていないだろうが、確実にキラの標的として、シンはロックオンされただろう。そしてそれは、ある意味“死”を意味していた。
「・・・シン君、あとで僕の部屋に来てくれないかい? ゆっくりと話がしたいんだ。二人っきりで、ね」
「ハァ・・・」
キラの凄みのある笑顔に、シンは冷や汗かきながらも、素直にうなずいた。
「じゃあ、行こうか・・・」
「っ!!! 見つけたぞ!!!」
キラがの肩を抱き、歩き出そうとすると、突然彼女の背後から声がし、そのまま彼女の体がかっさらわれた。
見れば、金髪の少女がを後ろから抱きしめており、甘えるかのように彼女の肩に顔を埋めていた。
「カガリ、おはよ〜」
「あぁ、おはよう。そんなことより、! おまえは何度言ったらわかるんだ? こんなバカ男どもと一緒にいたらダメだ!!」
「カガリ・・・仮にも自分の双子の弟に向かって“バカ男”はないんじゃ・・・」
「い〜や! この際、血の繋がりなんて関係ないっ!!」
乱入してきた双子の姉に、キラは憤りを感じたが、どこか逆らえない姉に、グッと言葉を詰まらせた。
「いいか? おまえにふさわしい男は、私が見つけてやるっ! だから、こいつらとは関わっちゃダメだ。の身が危険に晒される!!」
「カガリ・・・大げさだよ・・・」
「いや! そんなことはない。いや、待てよ・・・? に男は必要ない。私がを一生かけて幸せにするぞ。オーブに一緒に行こう!!」
「話が飛躍しすぎ・・・」
「そうですわよ、カガリさん。は、わたくしと一緒にクライン邸で幸せに暮らすのです」
「・・・来たな、女帝っ!!」
そこへ現れた桃色の髪の少女に、シンもアスランもキラも、黙って道を開いた。
カガリは冷や汗をかきながらも、その背にを庇う。
そんなカガリの様子に、ラクスは穏やかな微笑を浮かべた。
つまり・・・彼らの関係はこうだ。
ルナマリア<シン<アスラン<キラ<カガリ<ラクス
ルナマリアが一番下・・・ということになるが、彼女にとって、それはそんなに屈辱的ではないようだ。彼女は、の“同い年の親友”ということで、それなりに優越感に浸っているようで・・・。
ちなみに、メイリンやレイ、ヴィーノたちは争奪戦に加わったりはしない。また、の同室であるルリも、彼らの抗争には我関せずというある意味、一番正しい姿勢を貫いている。
「今日こそは、ハッキリさせましょうか・・・。はどなたを一番に想ってらっしゃるのか・・・」
「望むところだっ!!」
「へぇ〜・・・ラクスもカガリも、ずい分と強気だね? 僕はかまわないけど」
「オレは、すでにのものだと思っている。彼女もそう思ってくれていると、いいんだが・・・」
「アンタら、さっきから勝手なこと言ってますけど、オレはとデートの約束取り付けたんですよ? オレが一番に・・・」
「「「「なんだってぇ!!!?」」」」
シンの一言に、ラクス・カガリ・キラ・アスランが一斉に矢のような視線を彼に向けた。
そのあまりの恐ろしさに、シンはビクッと肩を震わせ、後ずさった。
「年下のくせに、をデートに誘うなんて・・・どなたですの? 彼の教官は!!!」
「そうだそうだ! こういうことが起きないように、私はをオーブに連れて行くと言っているんだ!」
「僕だって、まだキスすらしてないのに・・・!! シン君、一体何を企んでるの!?」
「シン・・・おまえ・・・人が優しくしてやったら、恩を仇で返すつもりか・・・!!?」
4人に睨まれ、いつもは教官に対して牙を剥くシンが、まるで仔猫のように怯えてしまっている。
「さぁ、! シンのことは放っておいて、わたくしたちの中から、誰を選ぶのか決めてくださいな!」
「、おまえが決めることなら、私たちは否定しないぞ!」
「僕は君だけのものだよ? そのこと、忘れないでね?」
「オレだって、同じ気持ちだっ!!! オレは、だけのものだぞ!?」
一斉にによってたかり、ギャーギャー討論を始めるラクスたち。
「・・・い」
「「「「え?」」」」
「うるさ〜いっ!!!!」
大声で怒鳴りつけたに、さすがのラクスたちも言葉を失った。
そんな4人を、はキッと睨みつけ、衝撃的な言葉を吐き出した。
「みんな、いい加減にしてよっ! みんなは、みんなのものでしょ!? 私のものなんかじゃないんだからっ!!! それから・・・ラクスとカガリは私の大切な親友!! キラとアスランは私の大切な幼なじみ!! それ以上でもそれ以下でもないわっ!!!」
「え・・・? それじゃ・・・シンは・・・??」
「シ、シンは・・・」
アスランの言葉に、は顔を真っ赤にさせて、うつむいた。
「・・・シンは、私を捧げてもかまわないって思ってる人・・・」
「「「「「!!!!?」」」」」
の爆弾発言に、その場にいた5人が驚愕に目を見開いた。
「さ、捧げるって・・・シンとなら、ヤッちゃってもいいってこと!!?」
「キラ・・・!!」
ハッキリ告げるキラに、非難の視線を投げ・・・はズカズカとシンのもとへ歩み寄り、彼の腕をガシッと掴んだ。
「行こ、シン」
「え・・・あ、うん・・・」
「「「「・・・!!」」」」
尚も声をあげる4人に、はキッと顔をあげ、目の前に立つシンの口唇に、自分の口唇を押し当てた。
「「「「「!!!!」」」」」
声にならない悲鳴が巻き起こり、歌姫が失神したのは一瞬後のことだった。
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やはり、私はキラよりシンが好きみたい(苦笑)。ちゅーか、これじゃあ、シンがかわいそうすぎるよね。と、いうわけで、さんが選んだのは、シン君でした〜と。
まぁ、作中でも言ってますが、ラクスとカガリは親友、キラとアスランは幼なじみなんですね。にとって、キラとアスランは幼なじみであり、兄のような存在で、恋愛対象として見られなかったんだと思います。・・・もったいないけど(笑)。
ラクス様の女帝ップリ、書くの楽しいと気づいたワタクシです・・・。
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