「お誕生日、おめでとう!」
そう告げるはずだった。笑顔でそう告げて、それで・・・一緒にケーキを食べて。ずっと一緒にいるはずだったのに・・・。
「・・・39度2分」
ベッドの上に寝転がる黒髪の少年・・・真っ赤な瞳を少し潤ませ、申し訳なさそうにこちらを見上げる。
「コーディネイターのくせに、なんで風邪なんて引くの? 信じられないっ!」
「・・・ごめんってば、」
「謝ったって許してあげない。あ〜あ・・・病人の看護なんてしたくないのに・・・」
「・・・・・・」
少女の言葉に、風邪を引いた少年は返す言葉もなくうなだれる。
そんな少年・・・シン・アスカの様子に、少女・・・・はチラリと視線を向け、ため息をついた。
「もう・・・! 悪いと思ったのなら、早く治してよね? 少しでもいいから、シンの誕生日、お祝いさせて?」
「うん・・・」
今日9月1日はシン・アスカの誕生日・・・それなのに、朝起きて、シンの部屋に行ってみれば、彼は寝込んでいたというわけだ。
ちなみに、同室のレイはが来たのと入れ替わりに部屋を出て行った。
気を利かせたのか、ただ単に感染りたくなかったのか、それはわからないが・・・。
「あ・・・ね〜え? 何か欲しい物とかある?」
「えぇ? 用意してくれてるんじゃないの?」
「シンの日頃の生活態度で決めようと思ったんだけど・・・結局決まらなくてねぇ〜」
「何ソレ・・・いいよ、別に。何もくれなくてもさ」
あ〜暑い・・・ダルイ・・・とボヤきながら、額の上に置かれた濡れタオルに触れる。
「もぉ! そうやってムード台無しにする・・・!! そういえば、アスランも昔そうだったなぁ・・・」
「!!?」
の口から出た「アスラン」という名前に、シンは思わず目を見開く。
「・・・いっつもは“アスラン、アスラン”だもんな。幼なじみって、そんなに大切?」
「当たり前じゃない! それに・・・アスランは私の初恋の相手だし」
「は!? なっ、なんだよそれ・・・聞いてな・・・」
思わず、ガバッと起き上がってしまい、途端に襲い掛かった眩暈に、シンはそのまま後ろへと倒れこむ。
「シン!? 大丈夫???」
「あ〜・・・ダメ・・・世界が回る・・・」
「しょうがないなぁ・・・じゃあ、さんがとっておきのお薬をあげるね」
「へ・・・? 何それ・・・」
の言葉に、怪訝そうな表情を浮かべ、言葉を紡ぐシン。
そのシンの額に、の口唇がそっと触れた。
「はい、お薬!」
「・・・・・・」
「これで良くなるんじゃない? さ、今日はゆっくりと休んで。日頃の疲れも癒してね? 疲れてるんだよ、シン・・・。ずっと、戦いっぱなしだったしね」
「・・・」
「ん?」
タオルを氷水で冷やしなおし、はそれをシンの額に戻す。
「ごめんな・・・ホントに・・・」
「気にしてないって。それに・・・こうして、つきっきりで看病できるんだもん。ちょっと得しちゃったかな?」
「オレ、こんなに苦しんでるのに?」
「ウフフ・・・ごめん」
優しく髪を撫で、は微笑み、「おやすみ」と告げる。
今日は、ずっと傍にいるからね・・・シンの誕生日だし・・・というの言葉は、遠ざかる意識の中、確かにシンの耳に届いていた。
「・・・なんだよ、シンのヤツ! 風邪で寝込んでるっていうから、見舞いに来てやったのに!」
シンの部屋の外では、ヴィーノやヨウラン、ルナマリアたちといった面々が、聞き耳を立てていた。
「クッソ〜!! のつきっきり看病なんて、うらましいぃ〜!!!」
「ヴィーノ・・・あんた、まだのこと諦めてなかったわけ?」
「簡単に諦められるかっ! 覚えてろよ、シンっ! いつか絶対・・・!!」
ムリムリ・・・あのアスラン・ザラですら、の心を射止められなかったんだもん・・・ルナマリアの呟きは、心の中で吐かれ、ヴィーノの耳には届かない。
数時間後・・・すっかり良くなったシンは、改めてから誕生日のお祝いをしてもらったらしい。
プレゼントは・・・もちろん、彼女自身・・・。
☆★☆おしまい☆★☆
シン・アスカ生誕記念作品でございます(笑)。
シン、誕生日おめでと〜っ!!! 何年経とうが、間違いなく、私は“シン愛”ですっ!!! v(^^)
種運命の主役は君だっ!!!!!
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