ドリーム小説
最寄り駅の渋谷から、セントラル街を抜けて住宅街へ。はスマホに表示されている地図を見ながら、たちを案内する。
やがて見えてきた、辺りの建物とは明らかに違う、昭和の匂いが漂う一軒家。トタンを張り合わせただけに見える外壁。隣のコンクリートの今風な家とは対照的すぎる。
「あ、あそこみたい」
「え・・・あのボロッちい家??」
「うん。住所も合ってるし、表札も『斑目』って書いてある。間違いないよ」
はスマホをしまい、玄関へ向かう。ぢかし、見れば見るほどボロボロだ。“あばら家”というより、廃屋のようである。
「ね、ねえ、インターホン押したら壁が倒れる・・・なんてことないよね??」
「タライが落ちてくるかもしれないぜ」
「それ、何ターズのコント?」
とか言ってる場合ではなく。
「そんなこと、あるわけないでしょ。もう」
思わずも加わってしまったが、杏とモルガナの言葉をあしらい、臆することなくインターホンを押した。
《どちら様でしょうか》
しばらくして聞こえてきた、喜多川の声。が「です」と告げれば、「すぐ行くよっ!!」と血相変えた様子の声。そして、数秒とかからず開く玄関。満面に笑みを浮かべていた彼は、と竜司を見て、露骨に嫌そうな表情を浮かべた。
「高巻さんは歓迎するが、お前たちもか・・・」
「悪ぃけど、モデルの話じゃねえんだ。聞きてえことがあってよ・・・。斑目が盗作してるってマジ? 虐待もなんだろ?」
「正気か?」
ここまで直球ではなく、遠回しに尋ねようとしていたは、心の中で「あーあ・・・」とつぶやく。喜多川の表情が険しくなる。当然だ。
「ネットに出てんだよ」
そう言って、竜司は『怪盗お願いチャンネル』を見せた。それを覗き込み、喜多川はフッと笑い、だが次に声をあげて笑い飛ばした。
「くだらない! 盗作もありえないが・・・虐待だと? 虐待するほど子供が嫌いなら、住み込みの弟子なんて取るものか! それに今は、住み込みの門下は俺1人。俺がいないと言うんだから、疑う余地はない」
「お前がウソついてっかもしれねえだろ!」
「それは・・・」
喜多川が言葉に詰まる。だが、すぐに態度を変え、怒鳴り返した。
「身寄りのない俺を引き取って、ここまで育ててくれたのは先生だ!! 恩人をこれ以上愚弄する気なら許さん!」
なんだか、逆に怪しい。図星のように見える。だが、喜多川は頭に血が上ってしまっているようだ。
と、そこへ斑目本人が。ギクッと体を震わせる。
「どうしたんだ? 大声を出して」
「コイツらが、根も葉もない先生の噂を!」
「・・・許してやりなさい。悪い噂を耳にして、彼女のことを心配して来たんだろう」
「・・・はい」
「まあ、この偏屈な年寄りが、万人に好かれているとは自分でも思わんさ」
そう言って、穏やかに微笑む斑目の姿に、5人は言葉に詰まる。確かに、どんな人気者でもアンチはいる。天邪鬼なのかもしれないが。
だが、斑目はたちを“そういう人たち”だと思ってしまっただろうか。できれば、警戒はさせたくなかったが。
「横から出しゃばって、すまなかったね。けど、ご近所の手前もある。ほどほどに頼めるかね?」
杏が竜司を睨みつける。彼が大声で怒鳴り散らしたせいだ。
斑目は「それじゃ、失礼」と声をかけ、家の中へ戻って行った。斑目が家の中に入って行くと、喜多川がこちらを振り返った。
「非礼だったな・・・すまん」
「え、あ・・・いえ。私たちも、玄関先で騒いでごめんなさい」
いきなり謝罪した彼に、慌てながらも、がこちらにも非があったことを詫びた。
「・・・そうだ、あの絵を見れば、先生を信じてもらえるかもしれない。先生の処女作であり代表作・・・『サユリ』だ」
そう言って、喜多川がスマホを見せた。
そこにあったのは、1人の赤い服を着た美しい女性の絵。神々しい、満月のような光と、梅の花をバックにした、思わず見入ってしまう作品。だが、下の方に紫のモヤがかかっているのが、少し気になった。
「俺が画家を志す、きっかけをくれた絵なんだ」
「きれい・・・」
「ゲージツわかんねえけど、これすげえのはわかる・・・」
杏が感嘆の声を漏らし、無感性の竜司ですら、目を丸くして見入った。
と、喜多川がに向き直る。
「さんを初めて見た時、この絵を見たのと同じ感動があった・・・」
「え? え?? いえ、大げさですよ! 私、その辺にいくらでもいる女子高校生ですよ? 杏ちゃんの方が何倍もキレイです!」
「確かに高巻さんは美しい。だが、君には高巻さんにない美しさがある。俺には君が輝いて見えるのだ。俺は『サユリ』のような『美』を追求したい。君を描くことも、その一環だと思ってる。どうかモデルの話・・・よろしく頼む」
そう言い、に頭を下げる喜多川。今日は用事があるので、ということで、話はこれ以上できなかった。
家の前のガードレールに腰掛けた竜司の隣に、カバンから出てきたモルガナが器用に座る。
「なんか・・・いいヤツじゃね? 2人とも」
「メメントスで聞いた『マダラメ』は別人なのかもね」
「そういうことかなぁ・・・」
「せっかく『大物』見つけたと思ったのによ・・・」
ハァ〜・・・と竜司がため息をつく。新たなターゲットを見つけなければならないのか。
と、モルガナが口を開く。
「、イセカイナビはどうなってる?」
「うん」
がスマホを取り出し、画面を見る。「ヒットしました」の声。一同が目を丸くする。
「おいこれ、ナビ・・・」
「さっきの会話を拾ってたの・・・? この表示・・・斑目先生にもパレスが・・・ってことだよね!?」
「怪盗お願いチャンネルにもあったもんね。“裏の顔がある”って」
「確かに、裏の顔があるということか・・・」
が言うと、も同意した。危うく、自分たちも騙されるところだった。
「『マダラメ』と『盗作』に・・・『あばら家』か。こいつがキーワードみたいだ」
「つかこれ、マジで何なんだ!? ほんとにあんなジイさんにもパレスがあんのか・・・!?」
「入るには、最低限『本人の名前』と、『場所』がわかればいいんだな? あとはマダラメが、この『あばら家』を『何』と勘違いしてるかだ」
「それ・・・鴨志田の『学校』が『城』的な?」
「そういうこと」
それこそが『認知の力』。歪んだ欲望が見せる、偽りの姿だ。
「当てずっぽうでもいいから、なんか言ってこうぜ」
「急に言われてもよ・・・」
この『あばら家』を、斑目が『何』と思っているのか・・・。難しい。
「とりあえず、『城』とか?」
杏が鴨志田の時のことを出すが、ヒットしない。「違うみたいだ」とが答える。
「じゃあ『牢獄』は?」
聞こえてくる「候補が見つかりません」のアナウンス。竜司が眉根を寄せる。
「『刑務所』! 『倉庫』! それと・・・『教育指導室』! ついでに『牧場』!」
手あたり次第に場所を言っていくが、どれもヒットせず。モルガナが「・・・出直すか?」とつぶやいた。
「もう少し考えてみましょ? もしかしたら、画家と関係するものかもしれない。画家・・・うーん・・・『画材屋』?」
の言葉にも、ナビは冷たく先ほどと同じ言葉を返す。隣に立っていたが、スマホ片手に考え込んだ。
「・・・画家と関係する、か。『美術館』とか?」
《ナビゲーションを開始します》
「え!?」
が声をあげ、杏と竜司がを見る。
そして・・・歪む空間。もう慣れてきた光景だ。気づけば、4人は怪盗服に、モルガナは二足歩行になっていた。
「おい! いつの間に開始したんだ!? ビックリしただろ!」
「偶然あたり引いたんだから、しょうがねえだろ」
モルガナの抗議の声に、竜司が返す。確かにそうだ。
「もしワガハイが気づかずに歩いてって、また敵に捕まったらどうすんだよ!」
「二本足で歩いた時点でわかれよ」
「むむむ・・・」
正論を返してくる竜司に、モルガナが唸る。仲のいい2人だ。いや、1人と1匹か。
「モルガナでも、こっち入ったこと気づかないことがあるってこと・・・?」
「認知の歪みが少ないところだと、姿くらいしか変わらないこともあるしな」
「気づかないでパレスを歩いて、シャドウに見つかったら、シャレにならないね」
の言葉に、モルガナがモゴモゴと口ごもり、と竜司が苦笑した。
さて、あばら家は・・・と振り返ったとはあ然とし、杏が「うわ・・・」と声をあげた。
そこにあったのは、キンピカの巨大な建物。壁面には「斑目大画伯美術館」の文字。見事に歪んでいる。
「あばら家が・・・美術館、マジ・・・?」
下からはサーチライトが上方を照らしている。とりあえず、近づいてみると、入口には長蛇の列。
近づいて見ると、さらに豪華な姿が見えてくる。というか、悪趣味だ。
「パレスは欲に駆られた妄想の景色だ。カモシダのパレスが『城』だったようにな」
「斑目先生って、現実の美術館にも絵は飾られてるよね? 個展も大人気だったし、尊敬もされてる・・・。そんな人が、わざわざ『美術館』を妄想する?」
「言われてみりゃ・・・。盗作とも虐待とも関係ねえよな?」
「自分だけの美術館が欲しいのでは? デパートの一角を使った個展ではなく、美術館一棟モロモロ自分の作品を飾りたい、とか」
「なるほど」
の言葉に、が納得したようにうなずく。とりあえず、ここでこうしていても始まらない。中へ入ってみることに。
「つかよ・・・怪盗に美術館って、定番じゃね?」
「罠も定番だ」
「あ・・・確かにそうかも」
「まあ、あの爺さんの追っかけ、どいつも怪力だったしな」
「それ、関係ねえだろ」
昨日の、個展でのことを言っているのか。確かに、竜司はなす術もなく、人波に飲まれたが。
しかし、入ると言っても・・・入口はものすごい人だかりだ。並んだところで中に入れるのか、怪しい。正面から入るわけにはいかないので、とりあえず、侵入できそうな道を探すことに。
「それにしても、ものすごい煌びやかだね」
改めてパレスを見つめ、がつぶやく。あの人好きのする老人の心の中が、こんなことになっているとは。
「けど、あんなお爺さんが・・・? ピンと来ない」
「だから確かめに来たんだろ? 行こうぜ」
だが、事実こうして斑目にはパレスが存在する。それが何よりの答えだろう。
警備員の目を盗み、美術館の方へ進んで行く。どこからか、中へ侵入できないだろうか?
運よく開いていた天窓から中へ。入った内部には、飾られた人物画。
「・・・静かだな、不気味なくらい」
「それより・・・見て、これ」
が飾られている絵を指差した。先ほどから、ウネウネと動いているのだ。
「ここはパレスだぜ? 何があってもおかしくないだろ」
「でも・・・なんだか、この静かな空間といい、不気味」
「パレスの在り様は、主の心の在り様だ。絵は調べておいたほうがいいかもな・・・」
モルガナの言葉にはうなずく。杏が1つの絵に近づいた。竜司も杏の隣に立ち、絵の下にあるプレートを見た。普通は作品名と描かれた年などが記載されているだろうそこに、名前と年齢が記してあった。作品名・・・ではなさそうか。作者の名前? だが、ここは斑目の美術館だ。他の人間の描いた絵が飾ってあるだろうか?
とりあえず、先のフロアへ。だが、そこに飾られていたのも、人物画で。先ほどのフロアと、このフロア。そのどちらも人物画しか飾られていない。しかも、札には名前と年齢が記されていて。
先へ。だが、奥のフロアに入り、4人と1匹は足を止めた。そこもまた、人物画しか飾られていなかったのだ。
その異様な光景に、杏が眉根を寄せた。
「ねぇ・・・やっぱりおかしいよ・・・。斑目先生って、作風が多彩なことで有名なのに・・・。飾られてるのは、同じような人物画ばっかり・・・。個展の時とはまるで・・・」
「確かに、喜多川くんも言ってたよね。“普通、作風は絞られるけど、先生は多彩な絵を1人で描いてる”って」
「ちょっと待った!」
杏とが告げると、竜司が声をあげ、1つの絵を指さした。眼鏡をかけた、坊ちゃんカットの男性・・・その顔には見覚えがあった。
「コイツ・・・メメントスにいた奴じゃねぇか? 斑目のこと、話してた・・・」
「中野原夏彦だ。プレートに、名前が書かれてる」
「自画像・・・ではないようだな。ここは斑目のパレスだからな」
「それじゃ、これ・・・斑目先生が?」
の言葉にが声をあげ、中野原の絵を見つめる。
と、先へ行っていた杏が「え・・・うそっ!?」と驚愕の声をあげた。「どうした?」とたちは彼女に近づき、その視線の先を見た。
「喜多・・・川・・・くん?」
濃紺の髪と端正な顔立ち・・・。モルガナがプレートを見る。
「『喜多川祐介』って書かれてる。間違いないだろう」
「どうして、喜多川くんの絵が? え、ちょっと待って? ジョーカーの言葉が正しいのなら、これは斑目先生の描いた絵で・・・」
「全て、斑目の弟子を描いたものだな」
がつぶやく。も「そうだね」とうなずいた。
「マジか、この人数全部か? さっき、あばら家に行った時は・・・」
「弟子というか『弟子だった』連中だろう。最後の1人を除いてはな・・・」
「最後の1人・・・」
モルガナの言葉に、は喜多川の絵を見つめた。
彼は言っていた。「今の門下は俺1人」だと。つまり、この数多な弟子たちは、今はすでに斑目の下を離れているのだ。
「前の『ナカノハラ』って奴の件といい、なんとなく見えてきたぜ・・・」
「モナ、でも・・・」
「おっと、ラパン。確信が欲しい。もう少し奥を調べてみよう」
モルガナが言う。たちはうなずいた。そのまま奥へ進もうとするが、が動かない。は竜司たちに「先へ行っててくれ」と告げた。
「ラパン、大丈夫か?」
「あ・・・うん・・・」
片手で片腕をギュッと握りしめ、は悲しそうに眉根を寄せた。
「私、斑目先生の絵を見て、素直に“すごい”って思ったの。“キレイ”だって、“素晴らしい”って。でも・・・喜多川くん、言ったの。作品の1つを見て、“こんなもの”って」
握りしめた手に力がこもる。は口をはさまず、の声を聞く。
「おかしいな・・・って思った。尊敬している人の、師匠の絵を“こんなもの”だなんて・・・。でも・・・きっと、あの絵は・・・」
ギリッと腕に爪を立てられる前に、がその手に自分の手を重ねた。
「ラパンが気に病むことじゃない。それに・・・全ての謎を解くために、オレたちはここへ来たんだ」
「ジョーカー・・・」
「人の痛みを、自分のことのように思えるのは、の美点だ。でも、欠点でもあるな」
「・・・そう、だね。私、また」
「弱くない」
の言葉を遮り、が声を重ねる。「え・・・?」がを見つめる。仮面の向こうの灰色の瞳は、真っすぐにを見つめている。
「今も言った。“の美点だ”って」
「あ・・・」
「欠点は他で補えばいい。それに・・・オレが・・・」
「え?」
オレが? 首をかしげたに、は「いや・・・」と首を横に振った。
「とにかく、が思いつめる必要はない」
「うん・・・ありがとう・・・。あ、ジョーカー、“ラパン”だよ」
「ああ、すまない」
の冷静な返しに、はクスッと笑った。この人は、あまり感情を表情に出さない。いつだって、冷静だ。
「行こう? スカルたち、待ってるよ」
「そうだな」
の手が、の手から離れる。なぜか、はその手を寂しく思った。
***
2人と1匹の元へ向かった2人を、仲間たちは特に気にも留めなかった。何があったのか、わかっているのだろう。
に力を与えてくれるのは、いつだってで。竜司たちもそれをよくわかっていた。
仲間になって、まだ1か月ほどだが、2人の間には強い信頼と絆のようなものがある。当の2人は気づいていないようだが。
進んでいくと、大きなホールに出た。そこにあったのは、金色の巨大なオブジェ。滑り台のような、うねる波のような・・・そこを滑り落ちていく人々。遊具のオブジェだろうか。4人と1匹はオブジェに近づく。
「・・・これ見ろ」
「『無限の泉』・・・?」
モルガナが作品名のプレートを示す。杏がそれを読んだ。どういう作品なのか。今までのような絵画ではない。
「『彼らは、斑目館長が私費を投じて作り上げた作品群である。彼らはあらゆる着想とイマジネーションを生涯、館長様に捧げ続けなければならない。それが叶わぬ者に、生きる価値なし!』」
杏が読み上げた作品の説明文に、は眉根を寄せた。これは斑目の心の中だ。
「あらゆる着想とイマジネーションを、生涯、斑目先生に捧げなければいけない・・・ってこと?」
「コレ・・・たぶん、盗作のことだよね・・・?」
「クソ、とんだ食わせジジイだ、あの野郎!」
確かに、怪盗お願いチャンネルの書き込みの通り、裏の顔があった。確たる証拠になりそうだ。
「弟子は『俺のモノ』ってとこか。ホントなら、まともな絵描きですらないぜ。画才のある弟子の着想を、生活を保障する代わりに盗んでるんだ」
「やっぱり・・・そうなんだ・・・」
確信を持ったモルガナの言葉に、は小さくつぶやく。何かの間違いであったら・・・と思ったのだが。
「まさかと思ったが、たくさん飾ってある人物画・・・やっぱりあれが『認知上の弟子』なんだろう。『生きる価値なし』ときてるぜ。これ、たぶん虐待のことじゃねえの? マダラメ様の役に立つうちは置いてやるけど、駄目になったら・・・」
「まるで奴隷や道具じゃない!」
「歪んでます・・・! こんなの、ひどい!」
再びがギュッと片腕を片手で握りしめる。竜司もギリッと歯噛みした。
「なんで祐介は黙ってんだ? 庇う理由ねえだろ!?」
「斑目には世話になっているようだからな。逆らえないんだろう。まだ高校生だからな」
「だからってよ・・・!」
「恩人には逆らえない・・・ってことだね」
はオブジェと見上げた。あの人物画の数だけ、斑目は盗作・虐待をしてきたのだ。人のいい顔の裏で。
「どうするよ? コレもう斑目がターゲットでいいだろ!?」
「みんなの意見は?」
憤る竜司とは対照的に、は冷静だった。激情に流されず、仲間たちに意見を聞く。
「まずはユースケに事実を確認すべきだな」
「んだよ、確認って!?」
「実際に悪事があったのかどうか、ウラ取っといた方がいいってことだよ」
「面倒クセェ・・・」
モルガナの言葉に、竜司がガックリと肩を落とした。は仲間たちをグルリと見まわす。
「私たち、まだ斑目先生のこと、よく知らないよね・・・。私、喜多川くんに連絡してみる。さっきは、あんなことになったけど、落ち着いたら話してくれるかも。いきなり“盗作してるだろ”って言うんじゃなくて、話を聞きだすべきだと思う」
「ラパンの言う通りだな。スカル、余計な口出しするなよ?」
「わかったよ! でもよ、絶対に成功させような! 怪盗団の初陣だし!」
「空回らないでよ?」
パンサーの呆れたような声に、スカルは「わーってるって!」と応えるが、不安であった。
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