王子様は私が見つける!

ドリーム小説

 「ねえ、ほんっとーに蛍について行くの?」
 「だから、“うん”って言ってるじゃない」

 身支度を整え、私はクルリと振り返った。視線の先には1人の女の子。偵察騎士のアンバーだ。

 「“旅人について行って、世界を見ることもいいことだ”って、団長代理も言ってたわ」
 「・・・そっかぁ」

 視線を落とすアンバーに、私はニッコリ微笑んだ。

 「蛍の旅が終わったら、私もここに帰るわ。私の家は、モンドだもの」
 「お兄さん、早くみつかるといいね」
 「そうね。それは蛍にかけてあげる言葉だけど」

 よし・・・!と。腰に剣を佩いて、準備完了だ。部屋を出る私について、アンバーも部屋を出る。
 そこにいたのは、ジン団長とガイア、リサだ。3人とも、見送りに来てくれたのか。

 「、気をつけて」
 「つらかったら、いつでも戻ってきていいのよ?」
 「ありがとう、2人とも」

 ジン団長とリサに微笑みかける。「それじゃあ」と4人の顔を見回した。

 「西風騎士団、行って参ります」

 とても晴れ晴れとした気持ちだ。いつもと同じモンドの景色なのに。
 旅の仲間である蛍とは、城門で待ち合わせだ。

 「、待ってくれ!」

 声をかけられ、立ち止まって振り返る。見れば、同僚の男性が走り寄ってきていた。

 「レイノルズ・・・お見送り?」
 「ああ。あのさ、気をつけて行ってこいよ」
 「うん。ありがとう」
 「・・・戻ってくるの、待ってるからな」
 「え?」

 レイノルズが告げた言葉に、目を丸くする。そんな風に言ってくるとは思わなかった。どこか照れくさそうな彼。

 「うん。戻ったら、ちゃんと報告するね」
 「ああ。その時には、俺と・・・」
 「え?」
 「あ、いや、なんでもない。じゃあ、またな!」

 走り去って行くレイノルズを見送り、改めて城門へ向かおうとし・・・そこにいた蛍とパイモンの姿に、微笑んだ。

 「ごめんね、2人とも。お待たせ」
 「いい雰囲気だったなぁ〜」
 「パイモン? どういう意味??」
 「え・・・ま、まさか気づいてなかったのか!? ニブイ! ニブすぎるぞ!!」
 「は?」

 気づいていない・・・ニブイ・・・なんの話だろうか? 首をかしげる私に、蛍が「あのね」と声をかけてきた。

 「あの人、のこと好きみたいだよ」
 「えぇ!? そ、そんなことないよ」

 な、何を言い出すんだ・・・! まさか、蛍がそんなことを言い出すとは思わなくて、激しく動揺してしまう。
 そんな私の目の前で、パイモンがからかうようにフワフワ動く。

 「そうか? いや、そんなことない。あいつはお前に気がある!」
 「にとっての、王子様かも」
 「え・・・あ・・・いや・・・」

 レイノルズが私の王子様?騎士団に入ってから、仲良くしていたけれど・・・だけど、そんなに甘い関係ではない。
 だから、申し訳ないけれど、彼のことはそんな風に見られない。
 私は、そんな相手を求めてもいないし。今は、蛍と一緒に彼女の兄を探し出したいと思う。

 「それで? 行き先は決まったの?」

 話題を変えるべく、問いかける。蛍は「うん」とうなずいた。

 「モンドから南西にある、璃月へ行くことにした」
 「璃月かぁ。岩神様の国ね」
 「は行ったことあるのか?」
 「ううん。私、モンドを出たことないから」

 異国情緒あふれる、素敵な場所だろう。実を言うと、岩神様のことも、よく知らない。璃月に着く前に、勉強しないと・・・。

 「あら? そういえば、ウェンティは? 挨拶した?」
 「うん。ついさっき。にもよろしくって言ってた」
 「え! バルバトス様が!? うわわ・・・恐れ多い!」

 少年の姿をした風神バルバトス様は、もう旅立ったという。また、どこかで会えるといいな。

 「さー! 行くぞ! 目指すは岩神の国、璃月だ!」

 パイモンの声に、私と蛍は大きくうなずいた。
 風と自由の都モンド・・・いつか、帰るその日まで、またね。