ドリーム小説

 それは、あまりにも衝撃的で・・・一体、何が起こったのか、民たちは呆然と一点を見つめていた。
 炎の広場で爆発が起きた。そして・・・一人の犠牲者が出た。
 白夜王国の女王ミコト、その人だった。

 「、怪我は!?」
 「だ、大丈夫です・・・」

 腕の中の少女に慌てて声をかければ、少女は気丈にもそう答えたが、真っ青な顔をし、タクミにすがりついている。怪我はなくとも、精神的打撃が大きいのだろう。

 「立ち上がれるか?」
 「は、はい」

 必死に立ち上がるも、足がガクガクと震えていた。
 目の前で人が死んだ。暗夜の謀略によって。しかも、それを招いたのは、戻ってきたばかりの白夜の王族。
 このまま、暗夜の凶行を黙って見ていることなど、できない。白夜の第一王子リョウマと、第三王子タクミは、兵を率いて国を離れることになった。

 「それじゃ、行ってくるよ」
 「はい。タクミ様・・・どうかご無事で!」

 今にも泣き出しそうなを抱きしめ、タクミが耳元で囁く。はタクミの背に手を伸ばし、しがみついた。

 「、必ず僕は君の元へ帰ってくるよ」
 「タクミ様・・・っ!!」

 ああ、離したくない。だが、そんな我儘は許されない。彼は白夜の王子として、国を背負って戦わなければならないのだ。
 親友の少女と、彼女の臣下仲間がタクミを待っている。は、そっとタクミから体を離した。

 「行ってらっしゃいませ、タクミ様」
 「ありがとう」

 行こう、とヒナタとオボロに声をかけ、タクミが去って行く。
 どうか、ご無事で・・・は、再びその言葉を心の中でつぶやいた。
 逢えない日が続いた。タクミは戦争へ行ったのだ。逢えるわけなどない。だが、逢いたくてたまらなかった。

 「殿、ですね?」
 「え?」

 ある日、店の中に入って来た客が、の顔を見て、そう声をかけてきた。眼鏡をかけた男性には、見覚えがあった。

 「あ、ユキムラ様。こんにちは」
 「こんにちは。今日は、あなたに大事な話があって参りました」
 「え・・・? あ、立ち話もなんですから・・・」
 「いえ、大丈夫です。すぐに終わります」

 手でを制し、ユキムラが一呼吸置くと、を見つめ、口を開いた。

 「リョウマ様とタクミ様が、消息を絶たれました」
 「え・・・!?」

 ユキムラが告げた言葉に、グラリ・・・目の前が真っ白になる。倒れそうになった体を、ユキムラが支えた。は「ごめんなさい、すみません」と弱々しくつぶやいた。

 「現在、ヒノカ様が行方を捜されています。テンジン砦にいるカムイ様も、捜索に出る予定です」

 ユキムラの言葉がズシリ・・・と胸に重しを置いたかのように、のしかかる。とても信じられない話だった。

 「・・・ユキムラ様」
 「はい」
 「どうして、私にそんな大事なことを教えて下さったんですか?」

 疑問だった。タクミとの関係は、一部の人間しか知らない上、二人は恋人同士というわけではない。友人の延長線上という感じなのだ。それなのに、なぜ?

 「あなたはタクミ様にとって、特別な存在だと聞いていましたから」

 カァ・・・と頬が熱くなる。恐らく、彼に告げたのはオボロだろう。特別な存在だなんて、自分ではそう感じないけれど。
 とにかく・・・今は、そんなことはどうでもいい。リョウマとタクミが心配だ。

 「ご無事、ですよね?」
 「当然です。私はそう信じています」

 ユキムラが毅然とした態度で答える。も、二人の無事を信じることにした。いや、必ず無事だ。
 逢いたいのに逢えない時間が続いて・・・ある日、ユキムラが再びを訪ねてきた。

 「伝書鳥が飛んできました。タクミ様が見つかった、と」
 「え・・・!」

 思わず、片手で口を押さえ、目を丸くした。そのまま、ユキムラに詰め寄る。必死の思いだった。

 「それで・・・タクミ様はご無事なのですか!?」
 「ええ。怪我もしておられないとのことです」
 「・・・良かった」

 ホッと胸を撫で下ろす。良かった、本当に。安堵の気持ちでいっぱいだ。

 「こちらも、白夜の様子を報告するため、伝書鳥を飛ばしますが、タクミ様に何か伝えますか?」
 「・・・いえ。ご無事だとわかっただけで、十分です」

 そっと微笑んだ。そう、今はそれだけで十分だ。タクミの身の安全を願って、神社へお参りに行こう。
 そして、この戦争が終わるようにと、祈ろう。