ドリーム小説
シラサギ城の中から、1組の男女が姿を見せる。
紋付き袴姿の国王と、白無垢姿の王妃。その姿を認めた民衆から、歓声があがる。もその姿を、多くの民衆たちに紛れて見つめていた。
王と王妃の姿が城の中へ戻ると、宰相のユキムラがお披露目が終了したことを告げた。喜びの余韻に浸る人々はなかなか広場を離れようとはしなかった。
「〜! 、いない〜!!?」
帰ろうとした時、城の方から聞こえてきた親友の声にギョッとした。一緒にいた両親が娘を見やり、相も変わらず名前を呼ぶ槍術士の少女に手を振った。
「あ、おじさん! おばさん!」
相も変わらず叫び声をあげる少女。彼女は王城兵士だ。立派な身なりをしていた。そんな彼女が親しげに笑みを浮かべて近づいて来るのが、誇らしいというより、恥ずかしかった。
「も〜! 。探しちゃったわよ!」
「もう、はこっちの台詞よ、オボロ・・・! あんな大声で名前呼ばなくても・・・!!」
「ああ、そうだ。そんなことより」
そんなことって・・・!と、抗議の声をあげようとすると、辺りがザワッと騒がしくなった。何かあっただろうか?と思うと、民衆の誰かが「タクミ様!」と叫ぶ。その名前にドキッとした。
「あ、タクミ様! こちらです!」
オボロが手を振ると、人並みが割れる。その奥に見えた人物は、見たことのない正装姿をしていた。王弟のタクミがこんな風に姿を見せるとは。
「ああ、いたいた。」
「タ、タクミ様・・・! あ、あの、本日はおめでとうございます!」
「即位したのも結婚したのも、リョウマ兄さんだけどね」
周りの目を気にしながら、挨拶をすると、苦笑してタクミはそう返してきた。確かに、彼の言うとおりである。
「義姉上もこれから大変だろうな。暗夜の王女から白夜の王妃になるんだから」
「そ、そうですね・・・!」
「、これからはヒノカ姉さんとサクラ同様、カミラ姉さんのこともよろしく頼むよ。仲良くしてほしい」
「も、もちろんです!」
ガチガチに緊張してそう告げれば、タクミとオボロが顔を見合わせ、笑った。
「どうしたのよ、。そんなに緊張しちゃって」
「だ、だって、みんなの前で王子に声をかけられて・・・! タクミ様はいつもと違うお召し物だし・・・」
「ああ、似合わないかな? オボロに見立ててもらったんだ」
「いいえっ!! とってもお似合いです! お似合いすぎて、直視できないわけで」
モゴモゴとつぶやけば、オボロが話をそらすように「そういえば」と言葉を紡いだ。
「カミラ様、とてもお綺麗でしたね」
「そうだね。案外、白無垢も似合ってた」
慎ましやかなカミラに、真っ白な婚礼衣装はよく似合っていた。慎ましやか、とは言っても、戦場では豹変することもあるようだが。
「カミラ王妃、素敵です。きっと、いいえ絶対にリョウマ様と、この白夜をかつてと同じ幸せな国にして下さいますよね!」
「そうだね」
「お二人の関係、すごく憧れます。お互い、支え合っていかれるんでしょうね」
うっとりした表情のに、タクミが目を丸くする。
「他人事みたいに言ってるけど、にだって支え合って生きていく存在、いるだろう?」
「え?」
「僕は、のことを大切に思っているよ」
臆面もなく言い放ったタクミに、は顔を真っ赤に染める。周りには白夜の民や、の両親がいるというのに。
「僕だけの思いこみだったのかな」
「い、いえ、そんな! わ・・・私も・・・タクミ様のことを・・・」
言いかけて、我に返る。だから、ここは人の目がありすぎるのだ。こんな場所で告白など出来るものか。
「タクミ様」
「うん?」
「続きは、二人になった時に」
その台詞もまた、意味深だということに、が気付いた時には、遅かった。その場にいる人々が「タクミ様、おめでとうございます!」と声をかけてくる。
それに対し、タクミは「ありがとう」と笑顔で返す。
ああ、だから・・・誤解を招きますって、タクミ様・・・。
そんな言葉が頭の中を過ったのだった。
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