ドリーム小説

 「ル・・・ルビカンテ!?」

 エッジが叫ぶ。あの赤いマントの男がそこに立っていたのだ。
 だが、それだけではなかった。

 「巨人は止まらぬ!」
 「バルバリシア!」

 ローザが口に手を当て、信じられないと首を横に振る。

 「クカカ・・・お前たちは!」
 「カイナッツォ・・・!」

 の目の前に、水色の亀のようなモンスターが姿を現した。

 「ここで屍となる・・・!」
 「スカルミリョーネっ! くそ・・・四天王がなぜ!?」

 セシルが腰の剣を抜く。あの時、倒した四天王たちが、なぜ今また襲い掛かってくるのか。

 「ゼムス様より授かった命で、お前たちを殺す!」

 バルバリシアの言葉に、セシルたちは愕然とする。ゼムスに、そんな力があろうとは・・・。

 「また戦えるとはな! だが、前の戦いでお前たちに教えられた。力を合わせるということをな・・・」

 四天王がジリッとセシルたちに近づいてくる。

 「持てる力の全てで、かかってこい!」

 グッとセシルたちは身構える。ルビカンテの炎がセシルたちを襲う。相変わらずの熱量だ。
 ブリザガの魔法で炎をかき消したところへ、カイナッツォの津波が襲い、6人の体が壁に叩きつけられた。
 セシルとエッジが攻撃にかかろうとするも、今度はバルバリシアが竜巻を起こす。

 「クソッ・・・! 連携プレーのせいで、近寄れやしねー!」

 エッジが刀を握り締め、憎々しげにつぶやく。セシルが剣を握りなおし、ルビカンテへ斬りかかろうとする。
 その瞬間、2人の間にスカルミリョーネが割り込み、その爪でセシルを襲う。避けたつもりが、腕を爪が掠める。鈍い痛みが走った。

 「なんだ・・・?」

 傷つけられた場所を見ると、見る見る青黒く変色している。ギョッとした。スカルミリョーネの爪には毒があるのだ。
 慌ててエスナの魔法を自らに施す。そのまま後退すると、スカルミリョーネにファイガの魔法が直撃した。リディアだ。続けざまに、がファイラの魔法を放つが、ルビカンテがそれを受け止める。彼に炎は効かない。
 ならば・・・とブリザラの魔法を放つと、今度はカイナッツォがその攻撃を受け止める。

 「ダメだわ・・・。あいつら、本当に力を合わせてきてる・・・!」
 「こうなったら、全員を引き離すしかない! 僕はスカルミリョーネ、エッジはルビカンテを頼む。リディアとはバルバリシアを。フースーヤとローザはカイナッツォを頼む」

 うん、とうなずく仲間たち。ローザは雷の矢を取り出す。雷が弱点の奴には効果的なはずだ。

 「行くぞっ!」

 セシルの声に、仲間たちがそれぞれ散って行く。
 まずはローザの弓がカイナッツォの体目掛けて飛んでいく。その横で、バルバリシアにサンダラの魔法が炸裂する。
 セシルはスカルミリョーネに正面から斬りかかり、エッジはルビカンテの懐に入り込み、刀を一閃。

 「こざかしい!」

 バルバリシアが叫び、再び竜巻が6人を襲う。体が吹っ飛ばされる。慌ててローザがケアルガの魔法を唱えた。

 「別々に攻撃しても、全体攻撃を繰り出してくるなんて・・・」
 「それでも・・・立ち向かうしかない!」

 ギリッと歯噛みし、セシルが剣を構える。カイナッツォが水をためている。津波がもう一度来る。

 「サンダガっ!!」

 リディアがその水の壁を破壊すると、セシルたちは再びそれぞれの相手へ向かっていく。
 も再びカイナッツォに向かおうとした時だ。

 「よ・・・」
 「フースーヤさん?」

 フースーヤに声をかけられ、は月の民を振り返った。

 「どうしたんですか?」
 「お主は、まだ力の使い方を理解いていないようだな」
 「え? どういう・・・」
 「手を貸しなさい」

 フースーヤの言葉に、はそっと彼の手に自らの手を重ねる。すると、フースーヤは目を閉じ、精神統一させているようだ。
 こんな時に・・・!と思うが、フースーヤの手を振り払うわけにもいかない。ジッとこらえていると、フースーヤの手が光り、手を伝っての全身を包んだ。かと思えば、光は消えて・・・。
 だが、身体が温かい。魔法の力が強力になっている気がする。

 「こ・・・これは・・・」
 「使ってみよ。“連続魔”を」
 「れん・・・ぞく、ま・・・?」

 うろたえている場合ではない。セシルたちは今も四天王と死闘を繰り広げているのだから。
 まず、はリディアの元へ。1人でカイナッツォを相手にしているのだ。
 は魔法を詠唱する。もしも、フースーヤの言葉通りならば・・・!

 「死ね! 小娘ども!」

 カイナッツォの体の周りに集まった水が、再び津波を起こそうとする。そこへ、雷の魔法が降り注ぎ、そして間髪いれずにもう一撃、雷の魔法がカイナッツォに直撃した。

 「な・・・なにっ!? サンダラの二重がけだと・・・!?」

 愕然とするカイナッツォ。リディアの隣にが立ち、「お待たせ」と微笑みかける。

 「残念ね、カイナッツォ。相手をみくびった罰だわ!」
 「おねえちゃんっ!!」
 「了解!」

 リディアの魔法が完成し、サンダガの強力な雷がカイナッツォに降り注ぎ、そして直後にサンダラの魔法が再び間髪いれずに叩き込まれる。

 「そんな・・・バカな・・・! ゼムス様・・・今一度・・・」

 カイナッツォの体が崩れていく。次は・・・ルビカンテだ。

 「エブラーナの王子よ・・・負けを認めるがいい」
 「うるせー!! そんなもん、出来るわけねーだろ!!」
 「エッジ!!」

 が叫び、ケアルラの連続をかける。大火傷を負っていた傷が、みるみる消えていく。

 「エッジ! 一気に攻めるわよ!」
 「お、おう!」

 いきなり乱入してきたに戸惑いつつも、エッジは巻物を取り出す。

 「ブリザラっ!!」
 「愚かな・・・そんな魔法で私が・・・」

 と、もう一撃。ブリザラの氷がルビカンテを襲い、同時にエッジの忍術が完成する。

 「水遁の術!!」

 カイナッツォの津波ほどの洪水が、ルビカンテを包み込んだ。炎と水の衝突に、ルビカンテの体からは水蒸気が上がる。

 「またしても・・・力を合わせたお前たちに・・・敗れるとは・・・」

 四天王の2人を倒した。残るは、2人。
 はスカルミリョーネの攻撃を避け、反撃の隙をうかがっているセシルに駆けていく。

 「フシュルルル・・・セシルよ・・・今度こそ、この毒の力で貴様を葬り去ってくれる!」
 「セシルに手出しはさせないわよっ!!」

 叫び、ファイラの連続魔を放つ。弱点の炎で攻められ、怯んだところを、セシルの剣が胸を貫いた。

 「バ、バカな・・・! ゼ、ゼムス様・・・!!」

 崩れ落ちるスカルミリョーネを無視し、とセシルは最後の四天王に目を向けた。
 体を包む風の渦で攻撃は当たらない。ファイアの炎もブリザドの冷気も風に阻まれて届かない。だが。

 「リディア! フースーヤさん! 雷を!」

 の声に、2人の魔道士は呪文を詠唱し、エッジが雷迅を放つ。

 「出でよ! ラムウ!」

 リディアが召喚したラムウが、強烈な雷を放つ。ローザが風が弱まったのを見て、雷の矢を放つ。と、フースーヤやのサンダガがその矢にさらに雷の力を与え・・・のサンダラ二連が、バルバリシアを直撃した。

 「な・・・生意気な小娘が・・・!!」

 バルバリシアの体が崩れる。ホッと息を吐く仲間たち。セシルが顔を輝かせ、恋人を見た。

 「、すごいじゃないか! どうして、そんなことが?」
 「フースーヤさんに、力を引き出してもらったの」
 「力を・・・?」

 ローザが目を丸くし、フースーヤを見る。フースーヤは「さよう」とうなずいた。

 「そういえば、テラが言ってたな。とリディアには優れた魔法の力があるって。これが、そうだったのか!」
 「私もビックリしたけど・・・これで、少しはみんなの力になれるかな?」
 「当たり前よ! でも、その力がある以前も、おねえちゃんはみんなの力になってたけどね!」

 リディアがに抱きつく。うれしそうなリディアに、も笑みをこぼした。

 「これこれ、まだ浮かれるのは早いぞ。巨人の制御システムを破壊しなければならないのだからな」

 フースーヤの発言に、セシルたちは、そうだった・・・と気を引き締める。
 強敵を倒したことで、浮かれていたが、目的は巨人の動きを止め、破壊することにある。

 「よし、先へ進もう!」

 セシルが気合を入れて仲間たちに声をかける。仲間たちは呼応するように、大きくうなずいた。