ドリーム小説

 「・・・え?」
 「だから・・・修道院を追い出された」

 あっさりと言ってのけたククールに、私は言葉を失った。
 え? 修道院を追い出されたって・・・住んでるところを追い出されたってことだよね?
 あまりにもあっさりと言われたけど、それってとんでもないことだ。ククールは、そんなにひどいことを仕出かしたのだろうか?

 「・・・おい、なんだよ、その目は」

 どうやら、冷たい眼差しを向けてしまっていたようだ。慌てて、気を取り直す。

 「どうせ、オレが何か仕出かして修道院を追い出されたとか思ってんだろ?」

 あ・・・どうやら、私の思っていることは、彼に筒抜けだったようだ。
 ククールは額に手をやり、ハァ〜・・・と深いため息をつくと、「あのな」と言葉を紡いだ。その表情は、今までに見たことのないもので・・・楽しい話じゃないんだな、って思った。
 ククールがした話は、やっぱり楽しくない話だった。1人の偉い人が殺され、その仇打ちのために、修道院を旅だったのだ。半ば追い出される形で。

 「・・・そっか。そんなことがあったんだ」
 「ああ。ってわけで、仲間が出来た。お前に紹介するよ」
 「それはどうも。でも、ちょっと顔を出すだけだよ? 基本、私って人見知り激しいんだから」
 「は? 何言ってんだ。お前も一緒に行くんだよ」
 「え?? いや、私はムリだよ!」

 何を言ってるんだ、この人は。別世界からやって来た人間を、一緒に旅に連れ出そうだなんて。足手まといにしかならないではないか。

 「バカ、こんな所にお前1人置いていけるか。大体、ここの支払いはどうするんだよ。オレがいなくなったら、お前の面倒見てくれるヤツはいないんだぞ?」
 「う・・・そ、それはそうかもしれないけど・・・」

 言い淀む私に、ククールが首から何かを外し、私に放り投げた。慌ててそれをキャッチする。
 手に入れたのは、十字架。私の世界でも、よくチャームとして使われている、あの十字架だ。もちろん、ちゃっちいものじゃなく、少しズシリとしている。

 「ほら、お守りだ。お前に何があっても、守ってくれるように、な。ま、オレは神様なんざ信じてないけどな」
 「う〜わ〜・・・お坊さんとは思えない。罰当たりだね、あんた」
 「何言ってんだ、今さら」
 「でもさ、ククールって僧侶みたいなことできるんでしょ? ほら、白魔法っていうの? ケアルとか・・・あ、それはちょっと違うか」
 「白魔法? さあ、そんな言い方はしないけどな。それと、魔法名はホイミだ」
 「そうですか・・・」

 まあ、そんなことはどうでもいいんだけどね。話を元に戻さなくては。

 「私、一緒には行けないよ」
 「まだそんなこと言ってるのかよ。そんなわけにはいかないんだよ。ほら、来い」
 「わっ・・・!」

 ククールが強引に私の腕を引っ張る。たたらを踏みながらも、私はしっかりとした足取りで彼について行く。
 宿屋の外へ出る。と、そこにいた3人の男女がこちらを見てきた。な、なんだ??

 「あなたがね?」
 「へ・・・?」

 女の子が私を見て、笑顔で声をかけてきた。私の名前、知ってる。なんで??

 「初めまして。わたしはゼシカ。仲良くしてね」
 「は、はい・・・」

 疑問を残しながらも、私の視線は彼女の胸に注がれてしまう。だって、すごいボリュームだ。ビックリしてしまうほどに。私にも少し分けてくれ・・・とか思ってしまう。

 「僕はエイトだ。よろしく」
 「アッシはヤンガスでがす」
 「よ、よろしく・・・」

 つまり、この3人がククールの仲間ということか。
 優しい笑顔の男の子と、ちょっと近寄りがたい男の人。そして、胸の大きな女の子。
 なんだか私、いつの間にやら一緒に行くことになってるけど・・・。
 でも・・・確かに、ククールがここにいないのに、私だけがここにいるのもどうかと思う。だって、ここの支払いはククールがしてくれてるんだし。

 「覚悟はできたか?」
 「・・・外ってモンスターが出るんだよね?」

 初めてこの世界に来た時、恐ろしいモンスターに襲われたことを、私は忘れていない。

 「大丈夫だって。オレが守ってやるからな」

 フッと微笑むククール。その言葉と笑みに、私はカァ・・・と頬を赤く染めた。
 「オレが守ってやる」だなんて。当然ながら、今までの人生で言われたことがない。それをいともあっさり言ってのけるとは・・・。イケメンというのは、ホントになんでもソツなくこなすんだ。

 「で? 覚悟は決めたか? お嬢さん」
 「・・・うん。ククール、絶対に守ってよね」
 「仰せのとおりに」

 恭しくお辞儀をするククール。なんだか、くすぐったい。けれど、うれしくもある。

 「それじゃあ、出発しようか」

 エイトの言葉に、私たち一同はうなずき・・・私はこの平和なドニの町を後にするのだった。
 ・・・その数分後、トロデ王を見て「ギャッ!!」と言ったのは、ここだけのヒミツだ。