ドリーム小説

 私が真面目か、と問われると、「そんなことはない」と答える。
 だけど、あの問題児よりかは真面目だと答えられる!!

 「ククールは・・・おっと、いるわけないな」

 そこにいた聖堂騎士の隊長らしき男が、そう言ってニヤリと笑えば、辺りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。

 「、お前も幼なじみと一緒に祈祷をサボってもいいのだぞ」
 「余計なお世話です」

 祈祷を済ませ、私は修道院を出た。キョロキョロと辺りを見回し、右へ向かう。天気もいいし、なんとなくあの幼なじみが何をしているのか、わかってしまう。
 しばらく歩けば見えてくる草原と、そこに寝転がる赤い服の人間。長い足を組み、ひなたぼっこでもしているようだ。なんてのん気な・・・。
 寝転がるその人物に近づき、ズイッと顔を覗きこめば、アイスブルーの瞳が私を見つめてきた。

 「やっぱり外にいたわね。お祈りの時間よ。こんなところで何してるのよ!」
 「なにって、サボり」
 「はぁ? もう! 真面目にやってよ!!」
 「もう何度目だよ。いい加減、あきらめろって。オレはこういう人間なんだよ」

 ククールの言葉に、私は大げさにため息をつき、彼の隣に腰を下ろした。
 こんなこと、思っちゃダメだけど、サボりたくなるのがわかるほど、気持ちのいい天気。私も彼と同じように、ドサッと草原に横になった。
 静かに流れる白い雲をボンヤリと見つめる。そして、思い出されるのは、先ほどのあの嫌味な男の顔。

 「ククールは、悔しくないの? みんなに厄介者扱いされて」
 「そんなの今さらだろ」

 私の言葉に、ククールはフッと鼻で笑って、そう返してきた。彼は、もう慣れてしまっている。

 「私は、悔しいよ。ククールにだって、いいとこあるのに」
 「へぇ? 例えば?」
 「この前、お婆さんに手を貸してたでしょ? 祈祷に来てたおばあさん」
 「ああ・・・。そりゃ、いくつ年を重ねても、レディはレディだからな」
 「ほら、そういう考え方。他の聖堂騎士なら、絶対にやってないよ」

 誇り高き聖堂騎士様は、自分にも他人にも厳しい。老人だろうが、女。子供であろうが、旅人であろうが、関係ない。
 法皇に仕える神聖な騎士様、確かにそうなんだけど。
 けして、私に対しても嫌味を忘れないから、毛嫌いしているわけではない。ええ、断じて。

 「オレもお前も、修道院を出たところで、行き場所がないもんな」

 ククールのその言葉に、私は目を丸くする。修道院を出たって・・・?

 「ククール、修道院を出たいの?」
 「そりゃ、できることならね」
 「オディロ院長がいるのに?」
 「院長には世話になってるが、窮屈すぎる。誰かオレをあそこから抜け出させてくれないもんかね」
 「捕らわれの姫みたいなこと言うのね」
 「姫か・・・そりゃいい」

 クックックッ、と笑いながら、ククールが「よっ」という短い掛け声と共に起き上がる。私もつられて起き上がった。

 「もしも、オレが修道院を出て行くことになったら、お前もついて来てくれるか?」
 「え・・・?」

 真剣な眼差しで見つめてくるから、思わず本気にしてしまいそうになった。いけない、だまされてはダメだ。

 「そうですねー。ククール様が連れて行ってくれるならー」
 「なんだよ、その投げやりな物の言い方」
 「だって、冗談でしょ? ククールが出て行くことも、私を連れて行きたいことも」

 私がつぶやくと、ククールは「あーあ」と小さく声をあげ、再び草原に寝転がった。

 「少し寝る。しばらくしたら、起こしてくれ」
 「えぇ!? しばらくしたらって・・・私、修道院に戻りたいんだけど!」
 「もう少し、ここにいろよ。あそこにいたって、息が詰まるだけだろ」
 「ま、まあ否定はしないけど」

 だけど・・・と言い募ろうとした私に背を向け、ククールは完全に寝入ってしまう。

 「・・・もうっ!」

 そんな風にされたら、私まで眠くなってしまうじゃないか。
 ゆっくりと草原に寝そべり、太陽の光を浴びて目を閉じた。
 少しだけ・・・少しだけなら、いいよね?