ドリーム小説

 目の前で、コーヒーを入れるくんを見つめる。真剣な眼差し。飲むのは私なのだから、そんなに真剣にならなくてもいいのに。真面目なくんらしいと言えば、らしいけど。

 「すごい視線を感じる・・・」

 ポツリとくんがつぶやく。当たり前。凝視しているのだから。
 今、店内は2人きり。佐倉さんは用事で出かけていて、モルガナは2階で寝ている。
 フラリと立ち寄ったルブランで、せっかくだからとコーヒーを頼んだ。練習の成果か、手つきは慣れている。
 ジッとくんを見つめたまま、考える。彼は眼鏡という仮面で、自分の素顔を隠している。前歴持ちの転校生。そんな自分を隠すように。ひっそりと生きていくために。
 その仮面に隠された素顔を、見たことあるのはほとんどいない。彼はきっと、お風呂の時と、寝る時くらいでしか、眼鏡を外さないのだろう。

 「、見すぎ」
 「だって・・・」

 フッと笑むくん。穏やかなその表情。17歳の、年相応の笑顔だ。
 眼鏡の奥の、くんの瞳。男の子なのに、大きくてまつ毛も長くて、澄んだグレーの瞳。

 「・・・くんって、モテたでしょ?」
 「・・・モテないよ?」
 「ウソだ! 今の間は、なに?」
 「が突拍子もないこと言ってくるから、驚いただけ」

 怪しい・・・隠してるな?
 だいたい、夜道で酔っ払いに絡まれてた女性を助けるなんて、そんなマネができる高校生なんて、そういやしない。大人だって躊躇するだろう。
 そんなくんを、冤罪なのに「怖い人」と決めつけるなんて・・・。

 「正義の味方のくんが、モテないはずありません!」
 「・・・別に正義の味方じゃないけど」
 「怪盗団のリーダーなのに、モテないはずない!」
 「オレが怪盗団のリーダーだって、知られてないけど・・・」

 「はい」と言いながら、くんがコーヒーを私の目の前に置いた。途端、フワリと香るいい匂い。
 一口飲み、フゥと息を吐く。

 「どう?」
 「おいしいよ? イケメンのくんは、なんでもソツなくこなすんだね〜」
 「何? 今日はどうしたの?」

 いつもなら、こんな風に言ったりしないんだけど・・・。

 「・・・くん」
 「うん?」
 「くんは、みんなのくんなんだよね?」
 「・・・だけのものになってもいいけど」

 告げられた言葉に、私は仰天した。いや、何を言い出すの??

 「やっぱり、くんってモテるよ・・・」
 「だけにモテたい」
 「本気にしちゃうから、やめて」
 「本気なんだけど」

 くんは、冗談も上手でした。





投票で、200票目だったペルソナ。連載の小話みたいな感じかな。